2026-06-09 コメント投稿する ▼
赤沢亮正経産相「ナフサ量は足りている」に業界から反論 エチレン稼働率は過去最低、品薄・値上がりは「目詰まり」だけでは説明できないのか
2026年6月9日、赤沢亮正経済産業大臣の記者会見でナフサ問題を巡る激論が起きました。週刊誌記者が「全体としてナフサは足りていない、協力を呼びかけるメッセージを業界に出してほしい」と繰り返し求めたのに対し、赤沢大臣は「まったく認識を異にします」「事実に基づく発信を続けることが責任者の行動だ」と強く反論しました。政府は一貫して「全体量は確保されており、問題は流通の目詰まりだ」という立場を崩していません。しかし、国内エチレン設備の稼働率は1996年の統計開始以来の過去最低を記録し、食品ラップ・シンナー・塗料・ゴミ袋などが品薄・値上がりする事態が続いています。量が本当に足りているなら、これほど広範囲にわたる品薄と価格上昇はなぜ起きているのでしょうか。
大臣と記者が激論、ナフサ「全体量は足りている」は本当か
2026年6月9日に開かれた赤沢亮正経済産業大臣の記者会見で、ナフサ供給問題を巡る異例の激論が起きました。週刊誌の記者が「全体としてナフサは足りていないので、流通の川上から川下まで協力しましょうというメッセージを業界に出してほしい」と繰り返し求めたのに対し、赤沢大臣は「まったく認識を異にします。事実関係としても間違えていると思います」と強い言葉で反論しました。
大臣は「全体量が足りてる」と認識することで、パニックによる買い占めがさらに広がるリスクを指摘し、「事実に基づく発信を続けることが責任者としての行動」と主張しました。川中在庫も「1.8カ月分あったものが0.1カ月分減っただけ」とし、代替輸入や在庫取り崩しで需要は満たせると説明しました。
ナフサとは原油を精製する過程で得られる石油留分で、エチレン・プロピレンなどの基礎化学品の原料です。これらからプラスチック・合成ゴム・合成繊維などが作られ、食品ラップ、シンナー、塗料、ゴミ袋、自動車部品まで、生活や産業の隅々に関わる素材の「出発点」となっています。
2026年2月末の中東情勢の緊迫化によりホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となり、日本のナフサ供給に深刻な影響が生じています。日本はナフサ輸入の約4割を中東に依存しており、その供給ルートが断たれた影響は甚大です。
エチレン稼働率は統計開始以来の過去最低、現場では品薄と価格高騰が直撃
政府の「全体量は足りている」という説明に対して、現場のデータは厳しい現実を示しています。
石油化学工業協会の発表によると、国内エチレンプラントの実質稼働率は2026年3月に68.6%と、1996年の統計開始以来、最低水準を記録しました。4月にはさらに67.3%まで低下しています。国内12基あるエチレン生産プラントのうち、4月時点で6基が減産体制に入り、フル稼働できていたのはわずか3基という状態でした。
エチレンの稼働率が統計開始以来の最低水準って、これで『足りてる』と言えるの?現場感覚とまったく違う
こうした生産現場での原料不足は、川下の消費者物価にも直接影響しています。食品用ラップ・ゴミ袋・シンナー・塗料・合成ゴムなどの値上がりや品薄が相次ぎ、宮城県栗原市など一部自治体ではゴミ袋の在庫がほぼゼロに近い状況も報告されています。ナフサ由来製品の価格上昇による家計負担は、年間2万円から3万円を超えるとの試算もあります。
政府が足りてると言い続けるなら、なぜシンナーもラップも値上がりして棚から消えるのか説明してほしい
また、代替調達を進めている化学大手各社が中東外から調達するナフサの価格は、通常時の約2倍に高騰しています。これは輸入段階から価格上昇が起きており、「目詰まり」だけでは説明がつきにくい要因のひとつです。
「政府発表と現場に大きな乖離」、塗料・シンナー業界が国交省に緊急要望
業界団体からも政府発表への疑問の声が上がっています。日本塗装工業会は国土交通省に対し、シンナーなど塗装資材の急激な品薄と価格高騰が起きているとして供給確保を緊急要望しました。その中で「政府発表と現場のサプライチェーンには大きな乖離が生じている」と明確に指摘しています。
塗料が手に入らないから工事が止まっている。これが『目詰まり』だけの話なのか、誰か納得いく説明をしてほしい
ナフサ関連の調査対象122社のうち、約4割が業績予想の下方修正を検討または実施済みとされており、純利益の減少額は合計1250億円に達するとの試算もあります。これは日本の製造業全体の利益率を0.5%から1%程度押し下げる規模です。
大臣が記者を強い言葉で押さえつけるのを見て、むしろ追い詰められているのではないかと感じた
赤沢大臣は5月末に8業界団体が「足元の供給量は安定増加し、今後も継続的に供給できる見通しだ」と発信したと述べています。しかし同じ時期、シンナーメーカーが供給量を削減し、川下に混乱が広がっていたことも会見の中で大臣自身が認めており、業界全体での「安定供給」との乖離が際立っています。
「量が足りているなら値上がりしないはず」、問われる政府説明の信頼性
政府の主張する「全体量は足りている、問題は目詰まりだ」という構図は、論理的に成立しています。しかし現実には、エチレン設備稼働率が過去最低を記録し、代替輸入ナフサの価格が約2倍に高騰し、日用品が品薄になっています。
量が本当に足りているなら、生産設備が稼働率を大幅に落とす必要はなく、輸入コストが2倍に跳ね上がることもなく、消費者物価に影響が出ることもないはずです。
物価高に苦しむ国民の生活に直結するこの問題において、政府には現場の実態と数字に基づいた、より具体的な説明責任が求められています。これ以上の物価上昇を防ぐためにも、ナフサ供給の実態について透明性のある情報開示と、迅速かつ実効性のある対策が必要です。
量が足りてるなら価格が上がらないはず。通常の2倍の値段で輸入してるって、もう足りてないってことでしょ
まとめ
- 2026年6月9日の会見で赤沢亮正経産相と記者がナフサ問題を巡り激論。大臣は「全体量は足りている、目詰まりが問題」と一貫して主張した。
- 国内エチレン設備の実質稼働率は2026年3月68.6%、4月67.3%と統計開始以来の過去最低水準を連続更新。12基中6基が減産体制に入った。
- 食品ラップ・ゴミ袋・シンナー・塗料・合成ゴムなどが品薄・値上がり。家計への影響は年間2万円から3万円超と試算される。
- 代替輸入ナフサは通常時の約2倍に高騰しており、「目詰まり」解消だけでは対処しきれない構造的な供給制約の存在が疑われる。
- 日本塗装工業会は国土交通省に緊急要望を提出し、「政府発表と現場の供給網には大きな乖離がある」と訴えた。
- 物価高が国民生活を圧迫する中、政府には実態に即した情報開示と早急な対策が求められる。