2026-06-07 コメント投稿する ▼
政府「ナフサ供給継続可能」の言葉を信じた顧客と板挟みの業者たち
2026年2月のホルムズ海峡封鎖に端を発するナフサ不足が、エアコン設置工事の現場を直撃しています。政府は「年度を越えて供給継続が可能」と繰り返し発信し、顧客はその言葉を信じますが、現場では架台や配管カバーなどナフサ由来の資材が1カ月以上ほとんど入らない状態が続いています。「政府発表と現場には大きな乖離がある」と専門家や業界団体が指摘するなか、政府の言葉を信じた顧客と資材が手に入らない業者の板挟みに苦しむ現場の疲労感は限界に近づいています。
架台がほとんど入らない メーカーから2カ月前に出荷制限の予告
2026年2月、中東情勢の緊迫化によりホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となり、日本のナフサ(粗製ガソリン)調達が急激に滞りました。ナフサはプラスチック・合成ゴム・合成繊維など現代の製造業を支える素材の基礎原料であり、日本は国内消費量の6割以上を中東からの輸入に頼っています。
この影響が、エアコン設置工事の現場を今まさに直撃しています。福岡市東区の家電販売店・カノデンキの古藤充社長は「いま一番在庫が足りないのは架台です。メーカーからは2〜3カ月前から出荷が制限されると知らせがあり、約1カ月前からはほとんど入ってこなくなりました」と話します。
架台とは、エアコンの室外機を安定して設置するために必要なナフサ由来のプラスチック製品です。これがなければ、エアコンそのものを取り付けることができません。当面の在庫が切れた場合は、別の資材で応急処置をしのぐしかない状況です。
さらに架台のほかにも、配線・配管を保護するプラスチック製のカバーや、ナフサ由来のテープ類の入荷が不安定な状態が続いています。古藤社長は「節約しすぎるときれいな仕事ができない。丁寧な仕事をしたいのに、資材が足りないのは本当につらい」とため息をつきます。
「架台が手に入らないと言っても顧客には伝わらない。政府が足りてると言ってるじゃないかと言われると返す言葉がない」
「政府の発表を信じて当たり前に工事が進むと思っている顧客に、資材がないと伝えるのが一番つらい仕事になった」
「工事を頼んだのに日程が決まらないと怒られる。こっちだって困っているのに、板挟みで本当に限界です」
「量はあると政府は言うけど、私たちの手元には届いていない。マクロとミクロの違いを誰か政府に教えてほしい」
「梅雨が明けたら一気にエアコン需要が増える。そのとき資材が揃っているのか、正直まったく見通せない」
「マクロは確保」でも現場は詰まっている 専門家・業界団体が一斉に警告
政府はナフサ由来の化学製品の供給について、中東以外からの輸入拡大や在庫活用で「年度を越えて供給を継続できる見込み」と繰り返し発信しています。代替調達先として米国・南米・アフリカなどからの輸入を進めており、例年の8割程度まで確保できているとしています。
しかし、経団連などは「マクロな在庫量と、ミクロな現場での目詰まりには大きな乖離がある」と指摘しており、具体的な是正を政府に求めています。ナフサといっても企業によって必要な種類・グレードが異なり、「量はある」でも「必要な種類が届かない」という複雑な実態があります。
資源エネルギー庁の有識者委員を務める専門家も「すでに現実として現場に不足が生じている」と強調。日本塗装工業会も国土交通省への要望書で「政府発表と現場のサプライチェーンには大きな乖離が生じている」と明記しています。
福岡県が2026年6月1日に中小企業81社を対象に行ったヒアリングでも、仕入れ値が上昇したと答えた企業が74%、資材の入手が困難と回答した企業も62%に上っています。この数字が現場の実態を正直に物語っています。
政府の「大丈夫」が生む逆効果 顧客の誤解で業者が板挟みに
この問題が業者を最も追い詰めているのは、資材不足そのものだけではありません。政府の「供給は継続できる」という発信が、顧客の間に「在庫があるはずだ」という誤解を生んでいる点です。
政府の安心発信を信じた顧客は当然、工事が予定通り進むと考えます。しかし実際には架台や配管カバーがなく、工事の日程を組めない状況が続いています。業者が「資材が手に入らない」と説明しても、「でも政府は大丈夫と言っていた」という反応が返ってくるケースも少なくありません。
ナフサの民間備蓄義務は1993年に廃止されたままとなっており、有事の際に国内在庫がわずか20日分しかなかったことが今回の混乱を深刻化させた一因です。現在の物価高は、数十年にわたる資源調達の脆弱性を放置してきた構造的な問題が背景にあります。政府は財政出動や減税をためらわずに現場を支援するとともに、備蓄制度の再整備という構造改革を急ぐべきです。
猛暑でエアコン需要急増へ 資材切れなら現場は機能不全に
梅雨明け以降に予想される猛暑は、エアコン設置工事の需要をさらに押し上げます。古藤社長は「猛暑が続いて去年のように9月・10月でもエアコン設置となれば、資材が足りなくなる。もうこれしかないと言われるので…」と先行きへの深刻な不安を口にします。
大手化学メーカーが2026年5月の決算説明会で「2カ月先までの目途は立っている」と述べたことは、逆に言えば3カ月先は見通せないことを意味します。中東情勢の抜本的な改善がない限り、2026年内は高水準の資材コストと供給不安が続く可能性が専門家の間で一致した見方です。
政府に求められているのは「大丈夫」という大枠のメッセージではなく、具体的にどの地域・業種でいつ頃資材が届くのかというきめ細かい情報発信です。現場の業者が顧客に胸を張って「工事が予定通りできます」と言えるようになるまで、政府の責任は終わりません。
まとめ
・2026年2月のホルムズ海峡封鎖で日本のナフサ調達が滞り、エアコン架台など資材が入手困難に
・福岡のエアコン業者・カノデンキでは架台が約1カ月前から入荷できない状態が続いている
・政府は「年度を越えて供給継続可能」と発信するが、経団連・業界団体は「現場との乖離」を指摘
・福岡県のヒアリングで中小企業の74%が仕入れ値上昇、62%が資材入手困難と回答
・「政府が大丈夫と言っている」と信じた顧客と、実際に資材がない業者が板挟みの状態に
・ナフサ民間備蓄義務が1993年に廃止されたままだったことが今回の混乱を深刻化させた一因
・財政支援と備蓄制度の再整備という構造改革を政府は早急に進めるべき
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