2026-05-21 コメント投稿する ▼
高市早苗首相がナフサ流通の「目詰まり」解消を指示 工務店・自動車整備・パン店に切実な声
ホルムズ海峡の実質封鎖を受け、原油から精製されるナフサ(粗製ガソリン)由来の石油製品が国内流通の現場で滞り始めている。2026年5月21日の関係閣僚会議で高市早苗首相は、小規模事業者を中心に「切実な声が多数ある」として目詰まりの解消を指示した。エチレン生産設備の稼働率は1996年以来の最低水準を更新し、食品包装から医療用品まで影響は広範囲に及ぶ。政府は「年を越えて供給継続は可能」と繰り返すが、現場の不安は収まっていない。数十年にわたる中東依存という構造問題が、今まさに国民の日常生活を直撃している。
「量はある」でも届かない ナフサ流通の実態
政府は2026年5月21日、首相官邸で中東情勢に関する関係閣僚会議を開きました。高市早苗首相はこの場で、ナフサ由来の石油製品について、流通過程で生じている目詰まりの解消に全力で取り組むよう関係省庁に指示しました。
首相は目詰まりが頻発している業種として、工務店、自動車整備工場、パン・菓子などの販売店を具体的に挙げ、「取引先との交渉力が弱い小規模事業者を中心に切実な声が多数ある」と述べました。経済産業省、国土交通省、農林水産省がそれぞれ地方の出先機関と連携し、事業者への聞き取りを進めながら目詰まり部分の特定と解消に重点的に取り組む方針です。
問題の本質は「量が足りない」ことではなく、「必要なものが必要なところに届かない」点にあります。ナフサといっても企業が必要とする種類は多岐にわたり、流通経路も川上から川下にかけて複雑に絡み合っています。政府が「供給継続は可能」と繰り返す一方、現場では依然として混乱が続いているのが実情です。
塗料の仕入れ値が急に上がって、注文が来ても請けられない案件が出てきた。小さい工務店には死活問題です
エチレン稼働率は最低水準 産業全体への打撃深刻
ナフサ不足の打撃は石油化学の基幹製品にも及んでいます。石油化学工業協会が2026年5月21日に発表した2026年4月のエチレン生産設備稼働率は67.3%で、記録が残る1996年以降で最低水準を更新しました。3月も68.6%と過去最低を記録しており、2か月連続で記録を塗り替えた形です。
エチレンはナフサを原料として作られる石油化学の基礎製品で、プラスチック、食品包装材、医療機器、塗料など日常生活に欠かせない無数の製品の材料となっています。石油化学工業協会の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は「ナフサの価格は高止まりしており、中期的に価格は大きな問題になる」と厳しい見通しを示しました。
国内ナフサ需要の実質的な8割が中東産で、ホルムズ海峡の封鎖によって調達が極めて困難な状況に追い込まれていました。政府は米国・アルジェリア・ペルーなど中東以外からの代替調達を急ピッチで進めており、2026年5月には米国からの輸入が前年比で約4倍に拡大する見込みです。ただ、代替調達の拡大がそのまま現場の供給安定につながるわけではなく、品目ごとの供給ひっ迫は続いています。
合成ゴムが大幅に値上がりして、タイヤ価格への転嫁も避けられない状況です。消費者の方には申し訳ないけれど限界です
医療用手袋を全国に放出 印刷インクの不安にも対応
会議では食品・医療分野への対応も示されました。高市首相は、国が備蓄する医療用手袋について全国412の医療機関などから最大計約160万枚の放出要請があったことを明らかにし、2026年5月23日から配送を開始すると表明しました。医療現場でのナフサ由来製品の不足は人命に直結する問題であり、優先的な対処が急務となっています。
食品分野では、印刷インクの調達不安を背景に、食品メーカーがパッケージデザインの変更に動く動きが出ています。これを受け、鈴木農相はナフサ由来の化学製品の需給状況についての見通しを共有するため、業界との情報交換会を来週設置する方針を示しました。
一方、産業界からは政府の情報共有の不足を指摘する声も上がっています。日本自動車工業会の佐藤恒治会長(トヨタ自動車副会長)は2026年5月21日の記者会見で「全体として回復方向に向かっていると理解しているが、一部で過剰な購入意向が見受けられる」と述べ、需要の偏りが流通の目詰まりを引き起こしている面があると指摘しました。経済同友会の山口明夫代表幹事も「流通網をもっと可視化し、心理的な不安を払拭することが重要だ」と政府に対応を求めています。
パンの袋や容器の値段が上がって、お客さんへの価格転嫁もそろそろ限界です。早く落ち着いてほしい
物価高の構造問題と今後の課題
今回の混乱の根本には、日本のエネルギー・資源政策が長年にわたって中東依存を深め続けてきた構造的な問題があります。ナフサは石油備蓄法上の備蓄対象外であるため、万一の際に国家レベルで直接手を打てる手段が限られており、この弱点が今回の危機で一気に露呈しました。
数十年にわたる調達先多様化の遅れという政策の結果が、今まさに国民の日常生活に直撃している形です。ナフサ由来製品の値上がりは食品や住宅資材、医療品を直撃しており、それは物価高として家計を一層苦しめています。補助金による一時しのぎだけでなく、エネルギーの調達先多様化や国内の石油化学基盤の強化に向けた、腰を据えた長期的な政策の立案と実行が今こそ求められています。
こういう危機が来るたびに中東依存の怖さを思い知る。もっと早く政策を見直すべきだったのでは
高市首相は「ナフサ由来の化学製品を含む石油製品は、年を越えて供給継続は可能だ」と改めて表明しており、関係省庁が一体となった対応を急いでいます。しかし、政府のマクロな「量の確保」と、ミクロな現場の目詰まりとの乖離(かいり)が埋まらない限り、国民の不安が解消されるまでにはなお時間を要する見通しです。
まとめ
- 高市早苗首相が2026年5月21日の関係閣僚会議でナフサ由来製品の流通目詰まり解消を指示
- 目詰まりが顕著な業種として工務店・自動車整備工場・パン菓子販売店を具体的に列挙
- 小規模事業者は取引先との交渉力が弱く「切実な声が多数ある」と首相が指摘
- 2026年4月のエチレン生産設備稼働率は67.3%で、1996年以降で最低水準を更新
- 石化協会長は「ナフサ価格の高止まりは中期的に大きな問題」と警告
- 医療用手袋の備蓄160万枚を412医療機関等へ5月23日から配送開始
- 食品メーカーが印刷インク不足でパッケージ変更を余儀なくされる事態も発生
- 経済同友会などから「流通の可視化」を求める声が相次ぐ
- ナフサは石油備蓄法の備蓄対象外で、長年の中東依存が今回の危機の根本原因