2026-05-29 コメント投稿する ▼
東京都の無電柱化条例施行 - 防災・景観向上に期待も、効果は「増やさない」だけでは限定的
今年度成立した「東京における宅地開発の無電柱化の推進に関する条例」に基づき、具体的な取り組みが始まります。 今回の条例は、都市整備局が担当し、新たに開発される宅地における電柱の新設を抑制するものです。 都道における無電柱化は、2025年度末までに整備対象の49%で完了する見込みですが、今回の条例が対象とするのは、開発される宅地に限定されます。
無電柱化推進の背景と目的
東京都は、都市の防災機能強化と景観向上のため、無電柱化を推進する方針を固めました。今年度成立した「東京における宅地開発の無電柱化の推進に関する条例」に基づき、具体的な取り組みが始まります。小池百合子知事が5月15日に公表した計画案では、重点整備エリアを従来の環状7号線内側から環状8号線(環八)内側へと拡大。環八内側および多摩地域の一部で、500平方メートル以上の宅地開発を行う際には、電柱の新設を原則禁止とする内容です。この条例は、災害時の倒木リスク低減や、電線地中化による美しい街並みの実現を目指すものです。
海外の先進都市では、ロンドンやパリのように都市部で100%の無電柱化が達成されており、日本との差は歴然としています。日本の都市部、特に東京23区では、2019年末時点で無電柱化率はわずか8%にとどまっていました。小池知事は、電柱が「戦後の復興時に、いち早く電力を津々浦々に行き渡らせるために木材でできた電柱が立てられた」ことに端を発し、その後コンクリート製に姿を変え、現在まで残っている実態を指摘しています。
災害時には倒壊した電柱が道路を塞ぎ、緊急車両の通行を妨げる恐れがあります。実際に、昨年発生した台風被害でも、電柱の倒壊事例が報告されました。空に張り巡らされた無数の電線は、現代の都市景観において、景観を損なう一因とも言えます。
条例の具体的な内容と限界
今回の条例は、都市整備局が担当し、新たに開発される宅地における電柱の新設を抑制するものです。試算によると、2027年度下半期には、年間でおよそ40~50カ所の新築宅地が無電柱化される見込みです。これは、1986年から建設局が進めてきた都道の電柱を減らす事業とは異なり、あくまで「増やさない」というアプローチに重点を置いています。
都道における無電柱化は、2025年度末までに整備対象の49%で完了する見込みですが、今回の条例が対象とするのは、開発される宅地に限定されます。さらに、環八内側と多摩地域の一部という限られたエリアが対象であり、東京都全体から見れば、その範囲はまだ一部に過ぎません。
区市町村が管理する道路については、各自治体の判断に委ねられており、都の条例だけでは網羅できません。仮に一つの宅地が無電柱化されたとしても、その周辺に既存の電柱が残っていれば、災害時に車両が通行できなくなるリスクは完全には解消されません。
この点について、都市整備局の担当者は「たしかにその通りだ」と認めつつも、「だからといって電柱をこのまま残していいわけではない。一つ一つ、着実に無電柱化を進めていく」との意気込みを示しました。
コストと今後の見通し
無電柱化には莫大なコストがかかることも、普及を阻む大きな要因となっています。国土交通省によると、無電柱化のコストは1キロメートルあたり約5億3千万円とされています。東京都は、2027年度、各局をまたいだ無電柱化推進のために586億円の総予算を計上しており、その財源確保と効率的な事業執行が求められます。
今回の条例は、無電柱化に向けた一歩ではありますが、その効果を最大化するためには、より広範なエリアでの取り組みや、既存インフラの更新、そして財源確保に向けた具体的な方策が不可欠です。小池知事が掲げる「国際都市・東京」の実現に向け、無電柱化は重要な要素の一つですが、その道のりはまだ長く険しいと言えるでしょう。「増やさない」という方針は、現状維持からの微調整に過ぎず、抜本的な解決には至らないという指摘も少なくありません。今後、都民の安全と都市の美観を両立させるために、より実効性のある施策展開が期待されます。
まとめ
- 東京都は「東京における宅地開発の無電柱化の推進に関する条例」を施行。
- 環八内側などでの新築宅地開発で電柱新設を原則禁止。
- 防災・景観向上への期待がある一方、対象エリアや方針の限定性が課題。
- 海外に比べ日本の無電柱化は遅れており、コストも大きな要因。
- 「増やさない」だけでは完全無電柱化は困難との見方も。