AI新時代へ防衛産業強化 経済成長と好循環を生むサプライチェーン構築の課題

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AI新時代へ防衛産業強化 経済成長と好循環を生むサプライチェーン構築の課題

2026年5月30日に東京都千代田区で開催されたシンポジウム「日本を強くする防衛産業」では、AI(人工知能)技術が急速に進化する現代戦の様相と、それに伴う日本の防衛産業が直面する課題、さらに経済成長との好循環を生み出すための戦略について、活発な議論が交わされました。

2026年5月30日に東京都千代田区で開催されたシンポジウム「日本を強くする防衛産業」では、AI(人工知能)技術が急速に進化する現代戦の様相と、それに伴う日本の防衛産業が直面する課題、さらに経済成長との好循環を生み出すための戦略について、活発な議論が交わされました。GMOインターネットグループの廣惠次郎氏と衆議院議員の鈴木英敬氏が登壇し、特にAIによる意思決定の高速化と、それに対応するための広範なサプライチェーン構築の必要性を訴えました。

AIが変える現代戦の様相


シンポジウムでは、まず現代戦におけるAIの役割が強調されました。廣惠氏は、2026年2月28日に発生した米国とイスラエルによるイランへの攻撃事例を挙げ、「AI戦争時代の幕開け」を印象づけました。この攻撃では、AIシステムが作戦開始から結果判定までわずか11分23秒という驚異的なスピードで意思決定を主導したとされ、これは人類史上初めてのことだと指摘されています。

この高速化の背景には、「F2T2EA」と呼ばれる射撃のサイクルがあります。これは、①発見(Find)、②確定(Fix)、③追跡(Track)、④目標選定(Target)、⑤交戦(Engage)、⑥評価(Assess)の6段階から成り立っています。通常、このサイクルを回すのに数日かかるところを、AIを活用することで劇的に短縮できるのです。例えば、衛星やレーダー、ヒューミント(人的情報)など多様な情報を統合し、敵味方を識別、目標を正確に捕捉・攻撃し、その結果を評価するまでの一連のプロセスが、AIによって自動化・最適化されつつあります。

鈴木議員は、この事例について、米パランティア・テクノロジーズ社のAIシステムが攻撃対象の選定、必要な燃料や弾薬の計算、コスト比較、推奨兵器の提示、さらには攻撃計画の立案まで行い、数千ものターゲットを分析したと補足しました。これは、従来の個別最適化(第1段階)から、システム全体の最適化(第2段階)、自動化(第3段階)、そしてAIによる自律化(第4段階)へと進む軍事システムの進化を示唆しています。多くの国が第1〜第2段階に留まる中、今回の事例は第4段階まで一気に到達した可能性を示唆しており、そのスピード感は日本の防衛体制に衝撃を与えています。

さらに、現代戦における指揮統制の重要性も浮き彫りになりました。米軍では、陸海空、宇宙、サイバー、電磁波といったあらゆる領域(ドメイン)を統合し、同盟国とも連携する「CJADC2(共同統合全領域指揮統制)」システムを構築しつつあります。この中核を担うのがパランティア社のプラットフォームであり、宇宙空間の活用が極めて重要になっているのです。例えば、射程1000キロのミサイルが目標に到達するまで1時間以上かかる場合、攻撃開始時のデータはすでに古いものになっている可能性があります。そのため、宇宙からの継続的な監視とリアルタイムでの情報共有が不可欠となります。鈴木議員は、自民党宇宙開発特別委員会としても宇宙安全保障を最重要課題と位置づけており、他国に比べて日本の衛星防衛能力が脆弱である現状を危惧しています。

防衛産業のサプライチェーン再構築へ


こうした急速な技術進化と戦い方の変化に対応するため、日本の防衛産業のあり方そのものを見直す必要性が議論されました。鈴木議員は、これまでの「防衛分野からのスピンオフ(技術移転)」という発想から転換し、民間分野で生まれた最先端技術を防衛分野へ応用する「スピンオン」こそが重要だと力説しました。

現状、防衛産業は「防衛装備専用の生産技術基盤」に焦点が当てられがちですが、これからは防衛と民間が双方にまたがる幅広いサプライチェーンの構築が求められています。鈴木議員は、縦軸を「民間・防衛共用↔防衛専用」、横軸を「国内↔海外」とした4つの象限を提示し、日本は現在「国内・防衛専用」の領域にしか対応できていないと指摘しました。今後は、この4象限すべてをカバーできるような、より柔軟で広範な産業基盤の整備が必要となります。

法制度・調達体制の抜本的改革


この広範なサプライチェーン構築を実現するためには、法制度や調達体制の抜本的な改革が不可欠です。鈴木議員は、現行の「防衛生産基盤強化法」が防衛省所管であり、国内装備品に限定されている点を問題視しました。この法律を防衛省と経済産業省が連携して全面改正し、4象限すべてに対応できる産業基盤強化を目指すべきだと提案しました。さらに、防衛副大臣を増員し、その一人が経済産業副大臣を兼任する案も示唆しました。これは、防衛と経済・民間の連携を具体的に進めるための具体的な一手と言えるでしょう。

また、技術革新のスピードに対応するため、調達制度の改善も急務です。変化に素早く対応できる「アジャイル型調達」の導入や、スタートアップといった非伝統的なプレイヤーの新規参入を促進する必要があります。さらに、当初予算や補正予算では技術の更新スピードに追いつかない可能性があるため、より柔軟な会計・予算制度の導入が求められています。

安全保障と経済成長の好循環を目指して


今回のシンポジウムを通じて明らかになったのは、日本の安全保障強化と経済成長は、もはや別々の問題ではなく、相互に深く関連するものであるということです。AI技術の進展や宇宙開発といった先端分野への投資は、防衛力の向上に直結するだけでなく、国内の技術革新を促進し、新たな産業や雇用を生み出す可能性を秘めています。

防衛産業を、単なるコストではなく、経済成長の原動力と捉え、民間技術との融合を積極的に進めること。そして、そのための法制度や調達体制を整備していくこと。これは、変化の激しい国際情勢の中で、日本が「強く、豊かな国」であり続けるために、避けては通れない道と言えるでしょう。今後の具体的な政策展開に、引き続き注目していく必要があります。

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2026-07-01 10:34:07(櫻井将和)

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