2026-04-10 コメント投稿する ▼
再審法改正案が先送り 平口洋法相「調整必要」、検察抗告制限に自民内でも異論
「再審」とは、確定した有罪判決を見直し、裁判をやり直す手続きのことです。冤罪(えんざい)、つまり無実の人が罪に問われた事件を救済するための最後の砦とも言われています。その再審制度を見直す刑事訴訟法改正案をめぐり、政府内および自民党(自民)内で混乱が続いています。平口洋法相は2026年4月10日の閣議後記者会見で、改正案の国会提出が先送りになったことについて「さらなる調整が必要と認識している」と述べ、修正を前提とした検討が続いていることを明らかにしました。
法制審答申の内容と政府原案への批判
今回の改正の出発点は、法相の諮問機関である法制審議会(法制審)が2026年2月にまとめた答申です。答申の主な内容は、再審請求手続きにおける証拠開示の範囲を一部拡大する一方で、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)を従来通り認め続けるというものでした。政府は当初、この答申に沿った改正案を早期に閣議決定し、国会に提出する方針でした。
しかしこの政府原案に対し、自民党の法務部会と司法制度調査会の合同会議では反対意見が相次ぎました。2026年4月3日の会議では「審理の長期化を招く」「冤罪被害者の救済を遅らせる」などとして検察官抗告の「全面禁止」を求める声が続出しました。この流れを受け、政府は原案のまま閣議決定することを断念し、検察の抗告に一定の制限を設ける方向での修正が不可避と判断しました。与党審査の段階で政府案が修正されれば、極めて異例の事態です。
また、開示された証拠を再審手続き以外に使用することを禁じる「罰則付き規定」に対しても反対意見が出ています。弁護士や研究者の間では、支援者や報道機関への情報提供を制約しかねないとして強い懸念が示されています。
法制審の委員選びに疑義、「出来レース」の指摘も
今回の混乱をさらに深刻にしているのが、法制審の委員選考をめぐる問題です。法務省への情報公開請求で入手した文書から、再審法改正を議論した法制審刑事法部会の委員について、検察官出身の法務省刑事局長が候補者を事実上選んでいた疑いが浮上しました。刑事局長が選んだとされる委員は全員が、検察官抗告を維持する見直し案に賛成していたとも報告されています。
法制審は中立的な専門家集団として答申をまとめる機関のはずです。しかし、その委員選考に検察サイドが深く関与していたとすれば、答申の中立性そのものが問われます。刑事法研究者や冤罪被害者支援団体からは「出来レース」との批判が上がっており、142人の再審研究者が連名で反対声明を発表しました。
「再審は冤罪被害者の最後の砦なのに、なぜ検察が抗告できる仕組みを残すのか理解できない」
「法制審の委員を検察側が選んでいたなら、答申の公平性は根本から疑わしい」
「政府がようやく修正の方向に動いたのは、与党内の良識ある声があったからだと思う」
「証拠を開示したら罰則、という規定は冤罪の再発を防ぐ市民の知る権利を制限しかねない」
「袴田事件のような悲劇を繰り返さないためにも、今回の改正で検察抗告は禁止にすべきだ」
玉木代表が政府案に懸念、抗告制限の方向で修正へ
国民民主党(国民)の玉木雄一郎代表は2026年4月7日の記者会見で「いまの政府案は自民党のなかですら問題ありとされている。このまま閣議決定されて出てくることはないと思う」と指摘しました。また、中道改革連合の階猛幹事長は「政府が原案のまま提出するなら修正案や対案を準備する」と述べており、検察の抗告を禁止する内容を盛り込む可能性を示しました。
平口法相は「法制審議会の答申を重く受け止めつつ対応を検討している。できるだけ速やかに提出できるよう力を尽くす」と語りましたが、具体的な修正内容については明言を避けました。現在、政府は抗告に一定の制限を設ける方向で検討を進めているとされていますが、全面禁止ではないため、冤罪被害者や弁護士団体からの批判が続く可能性もあります。
「開かずの扉」を真に開けるか、法改正の行方が問われる
日本弁護士連合会は2019年から検察官による不服申し立ての禁止を含む再審法の早期改正を求めており、これまでに支援した36件の再審事件のうち20件で再審無罪が確定しています。再審は「開かずの扉」とも呼ばれてきましたが、今回の法改正がその扉を真に開けるものになるかどうか、注視が必要です。政府・与党が修正案をまとめる過程で、冤罪被害者の声が正面から受け止められることが求められます。