2026-07-20 コメント投稿する ▼
兵庫県、財政難で「早期健全化団体」転落危機か 不適切会計が影響
兵庫県が、財政破綻の一歩手前とされる「早期健全化団体」に転落するリスクに直面しています。 2030年度にもこの状態に陥る可能性が浮上しており、その背景には1995年の阪神・淡路大震災からの復興事業や近年の金利上昇が影響しています。 都道府県で早期健全化団体となった例はなく、異例の事態となる可能性があります。
震災の影響が続く
兵庫県の財政状況が厳しさを増している根本的な原因の一つとして、阪神・淡路大震災の影響が30年以上経った今もなお重くのしかかっていることが挙げられます。国や県が発表した資料によると、震災による県内の被害総額は約10兆円にのぼり、復興事業費は約16兆3000億円という巨額に達しました。国が約8兆円を負担したものの、残りの約8兆3000億円は県や市町村が分担することになり、兵庫県だけでも約2兆3000億円もの負担が生じました。
この復興費用を賄うため、県は道路網の復旧などを中心に、震災関連で約1兆3000億円もの県債(借金)を発行しました。返済のために毎年、数百億円から時には千数百億円という公債費(借金返済費用)を予算に計上し続けてきたのです。2005年度まで集中的な返済努力が行われ、2006年度以降は公債費負担は大きく減少しましたが、震災から30年以上が経過した現在も、2024年度決算見込みで約1478億円もの震災関連県債が残っています。
一方、2011年に発生した東日本大震災では、震災復興特別交付税など国費による手厚い財政措置が講じられ、地方自治体の実質的な負担は大幅に軽減されました。しかし、阪神・淡路大震災当時はこうした特別措置がなく、復興のツケが長期間にわたり県財政を圧迫し続けている構造となっています。
早期健全化団体転落の危機
こうした状況下で、兵庫県は収入に対する借金返済額の割合を示す「実質公債費比率」が、2025年度決算までの3年間平均で18%を超える見通しとなりました。この比率が15%を超えると、県債の発行にあたって国の許可が必要となる「起債許可団体」に転落しますが、兵庫県はすでにこの状態に陥ることが確実視されています。さらに、この比率が25%を超えると「早期健全化団体」と判定され、財政規律の回復に向けた計画策定が義務付けられます。
都道府県で早期健全化団体となったケースは、これまで一度もありません。兵庫県がその最初の事例となれば、県だけでなく、全国の自治体財政にとっても大きな警鐘となるでしょう。
不適切会計処理が招いた問題
財政状況を厳しく点検する中で、今年6月下旬に新たに発覚したのが、地方財政法に抵触する可能性のある不適切な会計処理でした。問題となっているのは、過去に公共事業の用地取得のために発行した約490億円の地方債の扱いです。本来であれば、取得した用地を売却して得た約338億円の収入を、発行した県債の返済に充てるべきところ、これを充てずに2000年度に全額を借り換えていました。
この処理により、県債管理基金の残高を維持し、実質公債費比率を低く見せかける効果が生じていました。総務省に確認したところ、この地方債の扱いは「違法な起債の可能性がある」と指摘されています。県は当時の担当者に聞き取り調査を行いましたが、違法性の認識はなく、具体的な理由は不明としています。
一方、斎藤元彦知事は定例記者会見で、「当時の井戸敏三知事から、全額借り換えと県債管理基金の残高確保の指示があり、それに基づいて実施したと報告を受けている」と説明し、外部の専門家による検証を行う考えを示しました。
今回の不適切会計処理が明るみに出たことで、本来積み増されるべきだった基金残高が減少し、財政見通しを再計算した結果、実質公債費比率は最大で0.8%悪化することが判明しました。このまま対策を講じなければ、2030年度には早期健全化団体の基準である25%(3年間平均)を超える可能性が現実味を帯びてきています。
インフラ維持と財政再建の両立
この危機的状況を受け、兵庫県は財政再建に向けた素案をまとめています。具体的には、公共事業などの投資規模を最低でも10%抑制し、当面は実質公債費比率が25%を超えないように管理していく方針です。さらに、2025年度には歳入歳出全般にわたる抜本的な見直しに着手するとしています。斎藤知事は「実質公債費比率が25%を超えてしまっては、必要な事業ができなくなる。公共投資の一定の抑制は避けられない」と指摘しています。
しかし、県が進める「持続可能な財政運営検討会」では、委員から「インフラ投資の急激な削減は、機能喪失を招く」との懸念が示され、民間資金の活用も提言されています。また、県議会の常任委員会でも、「インフラ整備への投資は、将来世代に対する責任でもある」との認識を示す声が上がっており、インフラ投資の削減がもたらす長期的な影響への配慮も求められています。
兵庫県は今後、これらの意見を踏まえつつ、「公債費負担適正化計画」を策定し、8月中に国へ提出する方針です。震災からの復興という歴史的経緯と、現代の財政規律維持、そして将来世代に必要なインフラ整備という、相反する要請の間で、県は極めて難しいかじ取りを迫られることになるでしょう。
まとめ
- 兵庫県が「早期健全化団体」に転落するリスクに直面。
- 阪神・淡路大震災の影響が財政を圧迫。
- 不適切な会計処理が新たな問題を引き起こす。
- インフラ維持と財政再建の両立が求められている。