2025-08-21 コメント投稿する ▼
水源地所有権めぐる訴訟でニセコ町が異例の署名活動 海外転売と違法開発への懸念
ニセコ町・水源地所有権をめぐる訴訟と署名活動
北海道ニセコ町が、水源保護地域をめぐる裁判で異例の嘆願署名活動を始めた。問題の土地は町民の約8割、4千人への給水を担う極めて重要な水源地域であり、町が2013年に正規の契約に基づき取得した。しかし、17年前の旧所有者A社が「第三者が無断で売買した土地で、取引を知らなかった」と主張し、返還を求めて提訴。2024年9月、札幌地裁岩内支部はA社の主張を認め、町は敗訴した。現在は札幌高裁で控訴審が進められている。
町が強調する「公共の福祉」
ニセコ町は水源地を「公共の福祉を守る土地」として位置づけ、2011年に水源保護条例と地下水保全条例を施行。専門委員会の審議を経て水道水源保護地域に指定し、所有者との交渉を経て取得した経緯がある。町の担当者は「12年間、適切に保全してきた正規の取得だ。落ち度は一切ない」と強調する。
海外転売と違法開発のリスク
羊蹄山麓では近年、法規制を超える無断開発が相次ぎ、倶知安町や蘭越町でも同様の問題が顕在化している。町は「敗訴すれば土地が海外業者に転売され、違法開発により水源が危機にさらされるおそれがある」と強い危機感を示している。ニセコエリアは国際的リゾート地として人気が高く、外国資本による土地買収が急増しており、水源の安全保障の観点からも懸念は大きい。
「水源を外国業者に売るなんてありえない」
「正規の取引で買った町が負けるのはおかしい」
「観光バブルの裏で生活インフラが危うい」
「裁判官は地域住民の生活を考慮すべきだ」
「これは北海道だけでなく全国の問題」
こうした意見が町内外から寄せられ、ネット上でも大きな反響を呼んでいる。
異例の署名活動、その意味
町は8月25日までオンライン署名を受け付け、町民全世帯には紙の署名書類を送付済み。嘆願書では「水源保護地域の保全は町民の生命と暮らしを守るために不可欠」と強調し、司法に「寛大な判断」を求めている。自治体が係争中の裁判で署名を募るのは異例であり、町は「この裁判は全国どこでも起こり得る問題」と説明。第三者が正規の手続きで土地を取得しても、過去の所有者の主張で覆される危険性があるという点を訴えている。
水源保護と国民的課題
日本各地で水源地や森林が外国資本に買収される事例が相次いでいる。安全保障や食料生産に直結する土地の取引をどう規制するかは国会でも議論され、2021年に「重要土地等調査規制法」が成立したものの、水資源の保全を包括的に守るには不十分だとの指摘も多い。
ニセコ町の事例は単なる所有権争いではなく、「公共の福祉としての水源をどう守るか」という全国的な課題を突きつけている。観光振興と土地投資に沸く一方で、生活インフラの基盤が失われかねない現実が顕在化しており、司法の判断は地方自治体の土地政策に大きな影響を与えることになる。