2025-06-28 コメント投稿する ▼
【朝の小1の壁】品川・三鷹の学校開放で家庭を支援 人材不足で全国普及に壁も
「朝の小1の壁」深刻化 出勤と登校のギャップに悩む家庭
小学校に入学したばかりの子どもが安全に過ごせる場所が朝の時間帯に確保できない「小1の壁」が、共働き世帯を中心に社会課題となっている。特に「朝の小1の壁」とも呼ばれる現象では、保護者の出勤時間と子どもの登校時間が合わず、不安を抱えたまま家を出る親が後を絶たない。
この課題に対し、東京都品川区や三鷹市では朝の学校開放という新たな取り組みが始まっている。校庭や教室を朝早く開放し、地域の人材による見守りを行うことで、子どもたちの居場所を確保し、教育と福祉の接点を広げようという試みだ。
一方で、この取り組みを導入できていない自治体も多く、その背景には深刻な人材不足がある。安全を確保するためには信頼できる大人が必要であり、ボランティアやシルバー人材の確保は容易ではない。
品川区の先行モデル、朝7時半から学校開放
品川区では2024年度から一部の小学校で、登校時間を30分前倒しする形で学校開放を開始した。たとえば戸越小学校では午前7時30分から児童を受け入れ、多目的室での自習や読書が可能となっている。この日は初日にも関わらず13人の児童が参加し、2人の見守り員が常駐して安全を確保していた。
同校の川田重久校長は、「家庭の生活様式は多様化している。学校としても柔軟に対応する必要がある」と語る。子どもの安心と保護者の就労継続を両立させるために、公教育のあり方も変化を求められている。
加えて、品川区では秋から朝食無料配布の計画も進めており、子どもの健康増進も視野に入れた多角的な支援を打ち出している。森沢恭子区長は「朝食をとって1日を元気に過ごしてもらいたい」として、単なる預かりではなく生活支援まで踏み込む姿勢を見せた。
三鷹市では毎朝200人が校庭で遊ぶ
一方の三鷹市では、より開かれた朝の居場所づくりに取り組んでいる。市内の15校すべてで晴天時に校庭を開放しており、事前登録も不要。毎朝、第三小学校には約200人の児童が集まり、ボール遊びやなわとびなどを楽しむ姿が見られる。
安全確保のためには、市教育委員会とシルバー人材センターが連携し、見守り体制を整備。第一小学校で見守り員を務める76歳の磯部孝子さんは、「毎朝鬼ごっこをしている子は運動会でも足が速かった」と、子どもの成長に目を細める。
このように、単に「預かる」だけではなく、地域ぐるみで子どもたちの身体づくりや生活リズム形成にも貢献している点が、三鷹モデルの特徴だ。
「こういう取り組みが全国に広がれば安心して働ける親が増えると思う」
「朝から学校が開いていれば、祖父母に頼らなくて済む家庭も助かる」
「地域の高齢者と子どもが触れ合える機会にもなっていい」
「昔は鍵っ子が当たり前だったけど、今は安全が最優先」
「学校が預かり所になっていいの?という声もあるけど、現実的な支援策として必要」
拡大を阻む人材確保の壁 たった1.4%の実施率
朝の学校開放事業は有効な取り組みとされる一方で、全国的にはまだ普及していない。こども家庭庁が2024年に実施した調査では、朝の居場所支援を行っている自治体は全体のわずか1.4%に留まった。最大の課題は人材確保だ。
特に小規模自治体では、見守りに必要な人数が足りず、導入を断念するケースが多い。三鷹市シルバー人材センターの山元裕之次長によれば、「他の自治体からは『千人単位で人材が必要』『事故が起きたらどう責任を取るのか』という声もある」と明かす。
制度の枠組みだけでなく、安全管理や責任体制、そして地域社会による継続的な支援が必要不可欠だ。ボランティア任せでは限界があり、自治体と住民が共に制度を作り、守る意識が求められる。
実態を無視した机上の少子化対策より、現実的支援を
現場では、家庭と学校、そして地域が連携しながら「朝の壁」を乗り越えようとしている。だが、国の支援制度は十分とは言い難い。給付金ばかりを繰り返す少子化対策よりも、実際に働く親たちの悩みや生活リズムに即した制度設計が必要だ。
減税によって手取りを増やすことは、保育や子育て支援と矛盾しない。むしろ、生活基盤を安定させる政策こそが少子化対策の本質である。また、こうした朝の学校開放が単なる自治体任せで終わらないよう、スパイ防止法などと並ぶ国家の安全・生活保障政策の一環として、全国規模で取り組みを広げるべきではないか。
家庭と仕事、そして教育の接点で揺れる「朝の小1の壁」は、社会全体で真剣に考えるべき課題である。