2025-03-27 コメント投稿する ▼
横浜市の自衛隊への個人情報提供、波紋広がる:法的根拠とプライバシー懸念
横浜市の呼びかけに対して、「自衛隊に個人情報を流していいのか」「提供を望まない住民が自発的に申し出るべきではないか」といった疑問の声が上がっている。しかし、実はこの取り組みは横浜市だけでなく、全国で1000を超える自治体が実施しており、住民基本台帳の閲覧や転記も含め、約9割の市町村が自衛隊に協力しているという。
自衛隊法97条1項に基づく情報提供
横浜市の公式サイトによると、住民情報の提供は「自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部」であり、これは自衛隊法第97条第1項に基づく事務であると説明されている。この法的根拠により、市町村長は自衛隊からの情報提供依頼に応じる義務があるという。自衛隊法第97条第1項では、「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行う」と定められており、自治体は自衛隊の募集活動に協力することが義務づけられている。
自衛隊への名簿提供、拡大の背景
この名簿提供が広まった背景には、2020年12月に閣議決定された通知がある。これにより、それまでは住民基本台帳の閲覧や転記が主な手段であった自治体が、名簿提供に切り替えるようになった。これ以降、自衛隊の募集に関する情報提供が積極的に行われるようになったとみられている。
また、名簿提供に関しては「除外申請」措置を設けている自治体もあり、横浜市もその一つである。住民が提供を希望しない場合、申し出をすれば情報提供を拒否することができる。
プライバシー侵害を懸念する声
一方で、この名簿提供にはプライバシー権の侵害を懸念する声も多い。2024年2月、神戸市民のグループが自衛隊に名簿を提供することが憲法第13条に保障されたプライバシー権に違反するとして、国を相手に訴訟を起こした。また、奈良市の高校生も、個人情報が自衛隊に提供されたとして訴訟を起こしており、個人情報保護を巡る議論が活発化している。
さらに、兵庫県弁護士会は2022年6月に意見書を発表し、自衛隊への名簿提供に関して憲法第13条や住民基本台帳法に照らして再検討するよう地方自治体に求めた。意見書では、個人情報保護の観点から情報提供の詳細を広く市民に周知し、提供を希望しない市民については除外申請を可能にする制度の導入を求めている。
横浜市が行った自衛隊への住所や氏名の提供については、法的根拠が自衛隊法第97条第1項にあり、全国の自治体で同様の取り組みが行われている。しかし、この名簿提供にはプライバシー保護の観点から多くの懸念があり、住民の意向を反映させるための除外申請制度の導入が進められているものの、依然として議論は続いている。