2025-06-27 コメント投稿する ▼
ふるさと納税、ロゴ印刷で“地場産品”扱いの現実 制度の歪みと抜け穴競争が限界に
ふるさと納税は誰のため? ロゴだけで“地場産品”扱い、制度の歪みが限界に
「地域を応援する制度」が、今や“高級品をお得に手に入れる手段”になっていないか。
ふるさと納税制度をめぐり、総務省が2026年10月から返礼品の基準を厳格化する方針を発表した。背景にあるのは、自治体が「地場産品」の要件を形式的にすり抜け、地域外で製造された商品を“ロゴ印刷”などで無理やり地元産に仕立て上げている実態だ。
大阪府泉佐野市はその典型例といえる。返礼品として採用しているクラフトビールは、実際には長野県のブルワリーが製造しているものだが、缶に市のロゴを施したことで“地元の品”とみなしている。しかも製造業者と結んだ地域活性化合意書を根拠にしているが、計画していたレジャー施設の開業は延期。自治体の“関与”は極めて間接的で、制度の趣旨とはかけ離れている。
「ラベル貼っただけで“地場産品”って…納税者を舐めすぎ」
「ふるさと納税、どこまで形骸化するんだろう」
「自治体の苦労もわかるけど、これじゃネット通販」
「こんな抜け道があるなら、真面目な町が損するよ」
「ふるさとへの思いより“損得”で動く制度になった」
高級テントも“地場産品”? ロゴ印刷で再登場のカラクリ
神奈川県鎌倉市のケースも象徴的だ。返礼品として提供している「鎌倉天幕」のテントは、ブランド名こそ“鎌倉”だが、製造は横浜市の企業。2023年には総務省が「地場産品ではない」として取り扱いを中止させたものの、ロゴを加えることで2024年に復活した。
ブランドの公式サイトでは、「地元仲間の声で立ち上がった」とストーリーを語るが、本社も工場も鎌倉にはない。自治体側は「地元企業との連携」や「地域ブランドの発信」を掲げるが、その実態は制度のグレーゾーンを突いた抜け道に他ならない。
総務省は今後、こうした工業製品について「付加価値の過半が区域内で発生した証明」を義務付ける方針だ。しかし、ラベル印刷や熟成などの“名目”で、海外産ワインや他地域製品が大量にふるさと納税に出回る現状は、簡単に是正されるものではない。
“応援の気持ち”から“税金の搾取”へ 制度の限界が露呈
もともとふるさと納税は「自分の育った町や応援したい地域に寄附ができる」仕組みだったはずだ。しかし今では、高額な返礼品目当ての納税が主流となり、制度の趣旨が薄れている。
寄附総額1兆1175億円のうち、約5000億円が通販サイトや仲介業者の手に渡っているという。納税者の税金が民間企業に流れ、自治体間の“返礼品競争”がエスカレートするほど、肝心の行政サービスへの財源が細っていくという皮肉な構図だ。
総務省は7月ごろから各自治体に対して確認作業を行うが、100万件以上の申請に対し、担当職員はわずか数名。制度の運用自体がすでに限界に達しているともいえる。
制度の見直しは急務 本来の「ふるさと」に立ち返れ
現在のふるさと納税は、地域の魅力発信というより、話題性と高額返礼品で寄附金を“買い取る”手段となっている。特に一部自治体が行っている、外部製品への“ロゴだけ地元”の手法は、誠実に制度を運用している他の自治体をも巻き添えにし、制度全体への信頼を損なっている。
制度の本来の目的は、過疎地や財源不足に悩む自治体を支援し、「都市と地方の税収格差」を是正することだった。今やこの制度は、制度設計の穴を突く“抜け道競争”となり、「ふるさと」とは無関係な商品や事業者を儲けさせる構図に変質している。
今こそ制度を根本から見直し、返礼品の基準や透明性、運用の公平性を再定義するべき時が来ている。国民の信頼と税の公平性を守るためにも、“ふるさと”の名を借りた“企業販促制度”から脱却すべきだ。