2025-06-26 コメント投稿する ▼
「外国人ファースト」批判の根拠に誤情報?東京都の無担保融資事業をめぐる炎上騒動の真相
外国人起業家支援策がSNSで炎上
東京都が実施している外国人起業家向けの無担保融資支援策が、思わぬ形で注目を集めている。令和4年から開始されたこの制度は、外国籍の起業家に最大1500万円までを無担保・無保証で貸し付けるもので、新たなビジネス創出と国際的な都市間競争力の強化を狙った政策だ。
だが最近、この制度をめぐって「融資の申請窓口が中国・香港にあり、中国人ブローカーが500万円を中抜きしている」といった主張がSNS上で拡散された。小池百合子知事の政策を批判する動画や投稿が繰り返し引用され、「外国人優遇」「外患誘致」「税金を使った利権構造」などの言葉が並び、炎上状態に発展している。
「都民ファーストの実態は外国人ファーストだろ、これ」
「なぜ日本人よりも外国人起業家の方が優遇されてるのか、意味不明」
「外患誘致ってレベルじゃない。完全に税金の無駄」
「日本人中小企業は見捨てて、なぜ外国人に税金を流す?」
「日本人の若手起業家には門前払いで、外国人には無担保?納得できない」
こうした発信が市民感情を刺激し、信ぴょう性に乏しい情報が政治的批判に利用される構図が鮮明になっている。
都が「誤情報」と明言、実態はどうなっているのか
東京都の産業労働局は、今回のSNS上の情報に対して「明らかな誤り」と否定している。窓口が中国や香港に存在しているとする噂に対しては、「申請窓口はすべて東京都内に設置されており、海外に窓口は一切存在しない」と説明。いわゆるピンハネ構造についても、「そのような実態は確認されておらず、事業者には通常通り審査を通じて融資している」としている。
また、融資を受けるには都内での起業を計画し、日本人と同様に事業計画や資金使途についての厳正な審査を受ける必要がある。外国人であることだけを理由に優遇されているという指摘は、制度の内容を無視した一面的な解釈といえる。
制度の趣旨と誤解が生む分断
東京都の外国人起業支援制度は、少子高齢化による労働人口の減少や国際都市としての競争力強化を目的に設計されたもので、外国人が対象であることは制度の目的に沿ったものである。だが、この点が国民感情とズレを生じさせやすいことも事実だ。
コロナ禍や物価高騰などで、都内の中小企業や個人事業主が苦境にある中、「なぜ外国人だけが支援されているのか」「日本人の若者には冷たい」という不満が噴出するのは当然の帰結とも言える。
一方で、事実と異なる情報が拡散されることにより、本来の制度趣旨や運用が歪められて理解されるリスクも高まる。今回のように、SNSで「外国人利権」や「中抜き構造」といった刺激的なキーワードだけが一人歩きし、制度自体が不正なものと誤解されることは、健全な政策議論にとっても大きな障害だ。
政治的利用と世論の操作
今回の誤情報の拡散には、制度への懸念というよりも、むしろ小池都政への不信感や、外国人政策への嫌悪感といった政治的な文脈が強く影響している。投稿の中には、都議会議員や地方議員のアカウントが率先して動画をリポストしているケースもあり、意図的な印象操作の側面も否定できない。
現代のSNS社会では、一次情報よりも「わかりやすく怒りを誘導する情報」が拡散されやすい。だが、誤情報が政策への不信や社会的な分断を助長するなら、都民の利益に反する結果になりかねない。
政治への批判は必要だとしても、事実に基づかない情報によって世論が形成されていく状況は健全ではない。制度の評価はその透明性と成果をもって行うべきであり、疑問があるならば検証すればよい。批判する側にも一定の責任が問われるべき時代に入っている。
制度の透明性と説明責任を両立せよ
東京都の外国人向け融資制度に対するSNS上の批判は、情報の誤解と政治的な思惑が入り交じる中で拡大した。その中には合理的な疑問もある一方で、制度を根本から否定しようとする誤情報が火に油を注いでいる状況だ。
今後、こうした事態を防ぐためにも、東京都側は制度の内容・実績・審査プロセスなどについて、より一層の説明責任を果たす必要がある。そして都民側も、「怒りを共有する投稿」ではなく、「根拠ある議論」を基に判断する視点が求められている。
誤解に基づく対立ではなく、事実に基づいた議論こそが、都政に対する信頼と政策の健全な実行につながる。