2025-07-04 コメント投稿する ▼
【沖縄の豚肉文化を未来へ】新垣淑豊氏が養豚業の危機に警鐘 「県民のそばに豚肉を」
豚肉は食材ではなく“文化”――沖縄独自の食の歴史
「県民の『そば』には豚肉が必要なのです!」
そう語るのは、地域文化に精通する新垣淑豊氏だ。自身のウェブサイトで投稿された論考で、新垣氏は沖縄の食と生活における豚肉の重要性をあらためて可視化した。
琉球王国時代から続く「鳴き声以外はすべて食べる」と言われた豚文化。沖縄そばの三枚肉やソーキ、中味汁、テビチなどはその象徴的存在であり、ラードは伝統菓子ちんすこうに欠かせない。「豚肉は単なる栄養源ではなく、風土・行事・地域の絆を育む文化そのもの」と新垣氏は記し、沖縄における豚肉の存在を“胃袋”と“精神”の両面で支えるものと位置づけた。
飼養頭数の減少が示す「文化の危機」
新垣氏は投稿の中で、現在進行中の養豚業の衰退が、沖縄の食文化そのものを揺るがしかねないと強く訴えている。
2024年の県内飼養豚頭数は約18万4,500頭と、1973年以来の最低水準。10年前と比較して約6万頭も減少しており、農家戸数も2015年の285戸から、2024年には174戸まで激減した。
特に小規模な家族経営の養豚場は、高齢化や後継者不足に加え、飼料価格の高騰という構造的課題を前に、廃業を余儀なくされるケースが続出している。
飼料価格と母豚不足、産業の根幹を揺るがす要因
新垣氏は、養豚業が直面している課題の核心に「輸入飼料価格の高止まり」を挙げる。トウモロコシや大豆といった主要原料は過去10年で1.8〜2倍に高騰しており、特に中山間地や離島などでは規模拡大によるコスト圧縮が難しいとされる。
また、投稿では母豚の減少にも言及。現在沖縄県内で飼養されている母豚は約1万7,000頭だが、毎年およそ7,000頭の更新がなければ繁殖能力の維持が困難になる。
その対策として、県と養豚振興協議会が導入した母豚導入支援制度(費用の50%補助)は「一定の効果を上げた」と評価しつつも、単年度事業では再生産体制の確立には不十分だとし、「最低でも3年以上の継続支援が必要」と訴える。
豚肉文化を守ることは、未来の沖縄を守ること
新垣氏は、養豚業の安定は単なる経済や供給の問題ではなく、「風土と文化の継承」に直結する問題であると繰り返し訴えている。
母豚導入支援は“入り口”にすぎず、繁殖効率の高い多産系統や原種豚の導入支援、飼料の地産地消化、若手農家への支援拡充など、より包括的かつ継続的な施策が不可欠と強調。
「豚肉を守ることは、沖縄の伝統と暮らしを未来へとつなぐことに他ならない」とし、行政、業界、そして消費者が一体となって動く必要性を呼びかけている。
新垣淑豊氏の投稿は、沖縄にとって豚肉がいかに深い文化的・生活的意味を持つかを明快に示し、同時にその根幹を支える養豚業が岐路にある現実に正面から向き合っている。
「そばに三枚肉がある」――その当たり前を守るために、今こそ持続的な支援と地域全体の意識転換が問われている。