2025-04-25 コメント投稿する ▼
沖縄県宿泊税、迷走 目的税から普通税へ転換検討 議会軽視と業界反発広がる
目的を忘れた迷走、議会軽視との声も
沖縄県が導入を目指している宿泊税について、玉城デニー知事は25日、これまで前提としていた「目的税」だけでなく「普通税」での導入も検討していると記者会見で表明した。住民負担の回避を理由に挙げたが、そもそも観光振興やオーバーツーリズム対策のために議論を重ねてきた経緯を思えば、議会や関係者を軽視しているのではないかとの懸念が広がっている。
- 県はこれまで宿泊税を観光目的に限定する「目的税」として導入方針を固めていた。
- 離島住民への配慮から、県民を課税対象外とするため「普通税」への転換を検討。
- 普通税化すれば、観光以外への支出も可能になり、宿泊税本来の意義がぼやける恐れ。
- 県議会での議論や観光業界との信頼関係を損ないかねないとの指摘が相次ぐ。
- 導入時期は当初予定の2026年度から大幅に遅れる可能性が高まっている。
観光のための税金、いつの間にか形を変える?
沖縄県が宿泊税導入に向けて動き出したのは、観光客増加に伴うインフラ負担や、オーバーツーリズムの影響を受けた地域の支援策を強化するためだった。税収は観光に特化して使う、というのが長年の議論の積み重ねだったはずだ。
ところが今回、離島住民への課税を避けるため、「普通税」に変更する可能性が浮上。普通税になれば、集めたお金の使い道に制限がなくなり、観光と無関係な事業にも流用できるようになる。
「これでは何のために議論を重ねてきたのか分からない」――観光関係者の間にはそんな失望感が広がっている。
離島配慮は理解されるが、やり方に疑問
確かに、医療や教育のために本島に宿泊する離島住民からも宿泊税を取るのは理不尽だという声はもっともだ。県もそこに配慮しようとしている。しかし、それならば導入の趣旨を守りながら、住民免除の仕組みを工夫する方法もあったはずだ。
いきなり税の性格そのものを変える――そんな乱暴なやり方に、議会関係者からは「議論を重ねてきた意味がない」「議会軽視だ」と怒りの声も漏れる。
市町村にも亀裂、観光業界は不信感
県と足並みをそろえて宿泊税導入を進めてきた本部町、恩納村、北谷町、宮古島市、石垣市の5市町村の間では、普通税方式への転換に異を唱える動きも出始めた。
「県が迷走するなら、独自に宿泊税を導入するしかない」と、独自施策を模索する声も聞かれる。
一方、宿泊施設や観光業界にとっても、普通税になることで「使途が見えにくい税金を徴収させられる」形になることに反発が強まりつつある。これまで協力してきた業界の信頼を裏切る結果になれば、観光振興どころか、かえって地域経済にダメージを与えかねない。
見失った原点、今こそ立ち止まるべき
玉城知事は「今後も関係市町村や観光団体に丁寧に説明する」と語るが、事態はすでに説明で済むレベルを超えつつある。
導入方式を突然変えるということは、これまで議論に参加してきた関係者の積み重ねた努力を無にすることに等しい。
観光税は、観光で潤う一方で生じる地域負担を支えるためのものだったはずだ。目的を見失い、ただ税を取りやすい形に変えてしまうなら、本末転倒だ。
県は今一度、立ち止まって、原点に立ち返るべきではないか。