2025-04-20 コメント投稿する ▼
「遅すぎた保守回帰」──高市早苗氏に見切りをつける保守層の静かな離反
遅すぎた「保守回帰」――高市早苗氏に見切りをつけた保守層
ドナルド・トランプ米大統領が突如発表した対日「相互関税」に、日本の政界が揺れている。自動車産業をはじめとする日本の基幹産業が打撃を受けかねないこの措置に、石破茂首相は顔色を失い、急きょ赤沢亮正経済再生相をワシントンへ派遣。なんとか回避を図るが、関税の行方はいまだ不透明だ。
そんな騒動のさなか、急に存在感を高めてきたのが、自民党の高市早苗衆院議員だ。昨年の総裁選では“女性初の首相候補”として注目を集めたが、敗北以降は沈黙を守っていた。その高市氏が、ここへきて突如「ジャパンファースト」を叫び、石破首相への批判を強めている。
「日本も本気を見せるべきだった」「上等だ、製造業は国内にとどめよ」といった発言は、保守層の心をくすぐるものだ。しかし――その声があまりに遅すぎた、というのが多くの有権者の本音だ。
保守層の間に広がる“失望”
高市氏は、4月3日に開かれた「保守団結の会」に参加し、石破政権を痛烈に批判。「陣頭指揮をとっている人物が見えてこない」と語ったほか、出席した保守系議員からは「石破では参院選は戦えない」との声も飛び出した。
だが、その場の熱気とは裏腹に、保守支持層からは厳しい声が聞こえる。「選挙が終わった後に“保守の顔”をしても遅い」「あの沈黙期間にすべてが決まった」。ネット上や地域の後援会でも、高市氏にかつて期待していた層が、すでに見切りをつけ始めている。
特に痛かったのは、昨年の総裁選での「靖国神社に今後も参拝する」との発言。筋は通っていたが、中国などとの外交リスクを懸念した議員が次々と支持を取り下げ、最終的に石破氏に票が流れた。あの時の傷が、今も尾を引いている。
保守票は「他党」へ分散
高市氏の背景には、日本会議をはじめとする保守系団体の存在がある。確かにその影響力は強く、支持基盤としては無視できない。しかし、最近では「日本会議中心の政治は行き過ぎだ」という声も党内外で増えており、無党派層や中道の有権者は離れつつある。
その結果、一部の保守層は、すでに他党へと足を向けている。日本保守党のような新興政党に期待を寄せる人もいれば、地方議会レベルで新たな保守候補を支援する動きも出てきた。「かつては高市推しだったが、今は違う」。そんな声が静かに広がっている。
石破政権には“意外な評価”も
一方、石破政権は支持率こそ低迷しているが、少数与党というハンディのなかで、現実的な政権運営を続けている。国民民主党や維新の会と連携して予算を通すなど、「不器用に見えて、実は手堅い」という評価も出てきている。
「石破さんは思わせぶりに“消費税下げるかも”と言いながら結局下げないとか、うまいよね」と話す党内関係者もいる。一時は“退陣論”まで飛び交ったが、最近は“案外やれている”と見る向きも増えている。
信頼を取り戻すには時間がかかる
高市氏が保守的な主張を強めること自体は、彼女の政治信条からすれば一貫している。しかし、その“声の上げ方”と“タイミング”が、かつての支持層には「自己保身のための演出」に映ってしまっている。
政治において最も難しいのは、一度離れた信頼を取り戻すことだ。高市氏が再び総裁候補として浮上するには、単なるパフォーマンスではなく、日頃の言動や行動の積み重ねが必要になる。だが、すでに多くの有権者は次の選択肢に目を向け始めている。
その時、高市早苗という名前が、どれだけの意味を持つだろうか。