2026-06-10 コメント投稿する ▼
再審制度見直し、高市首相が修正を否定 - 証拠の「目的外使用」禁止、人権保護との両論を整理
特に、検察官が証拠を開示した後、弁護人などが再審手続き以外でその証拠を第三者に提供・開示する行為を罰則の対象とする「目的外使用」の禁止規定について、首相は「関係者の名誉やプライバシーを保護するため」として、その必要性を強調しました。
再審制度見直しの焦点「証拠の目的外使用」禁止
今回審議されている刑事訴訟法改正案では、再審請求人やその弁護人が、再審手続き以外を目的として、検察から開示された証拠を他人に渡したり、見せたりすることを禁じる規定が盛り込まれています。この規定に違反した場合、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されることになります。ただし、弁護人が報酬を得る目的でなければ罰則の対象外とされています。しかし、この規定に対しては、弁護士が証拠の取り扱いに過度な注意を払うことで、事件関係者からの懲戒請求を受けるリスクを恐れ、結果的に情報提供活動が萎縮してしまうのではないかという懸念の声が上がっています。こうした状況を受け、日本新聞協会も、この禁止規定に反対する声明を発表するなど、法案に対する批判的な意見が表明されています。
首相、人権保護を理由に修正を拒否、法案の意義を強調
高市首相は、衆院法務委員会で中道改革連合の西村智奈美氏らの質問に対し、この「目的外使用」禁止規定について、その必要性を改めて説明しました。首相は「再審請求事件における支援活動や報道の意義については十分に認識している」と前置きした上で、「しかし、刑事手続きの過程で収集された証拠が本来の目的以外で使用された場合、関係者の名誉やプライバシーが侵害されるだけでなく、証拠隠滅や証人威迫につながる恐れがある」と指摘しました。さらに、「今後の捜査への協力を確保することが困難になるなど、さまざまな弊害が生じ得る」とも述べ、規定の必要性を訴えました。また、証拠開示の範囲を「請求理由に関連する証拠」に限定することや、裁判所が再審開始を決定した場合でも検察が抗告できる余地を残すことについても、「合理的な範囲内である」との見解を示しました。首相は、政府案について「不十分との指摘もあることは承知している」としつつも、「現時点で確実に再審制度を前進させるものと確信している」と述べ、政府案の意義を強調しました。
袴田事件関係者からの強い批判
この日の法務委員会の傍聴席には、昭和41年に発生した静岡県一家4人殺害事件で、長年の闘いの末に再審無罪となった袴田巌さん(90歳)の姉、ひで子さん(93歳)も姿を見せ、審議の行方を見守っていました。ひで子さんは、報道陣に対し、「この法律(政府案)がもし施行されていたら、弟(巌さん)は処刑されていたかもしれない」と、政府案に対する強い批判の言葉を述べました。この発言は、改正案が冤罪被害者の救済や、その支援に関わる人々の活動に与える影響の大きさを物語っています。袴田事件のように、長期間にわたる裁判や、証拠の取り扱いに関する複雑な問題を抱える事件において、証拠の開示範囲やその利用に関する規定が、真実の究明や権利擁護にどのように影響するのか、改めて考えさせられる事態と言えるでしょう。
今後の見通しと残された論点
今回の高市首相の発言は、再審制度の見直しを進める上での政府の基本的な方針を示すものと言えます。政府は、証拠の「目的外使用」禁止規定を、関係者の人権保護のために必要不可欠なものと位置づけています。一方で、弁護士や報道関係者、そして冤罪被害者の支援者からは、この規定が再審請求者の権利擁護や、事件の真相究明に向けた活動を不当に制約するのではないかという強い懸念が表明されています。今後、この法案が国会でどのように審議されていくのか、関係各所の意見を踏まえた修正がなされるのか、あるいは政府案のまま進むのか、その動向が注目されます。再審制度は、誤った裁判によって不当に投獄された人々の救済を目指す重要な制度です。その見直しにあたっては、手続きの適正さを担保する一方で、真実発見や人権擁護の観点も十分に考慮されるべきでしょう。