2026-04-06 コメント投稿する ▼
ホルムズ海峡通航料、ガソリン1円増でも安心は禁物 - エネルギー安全保障の脆弱性を突く地政学的リスク
野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏の試算によりますと、仮に日本の石油タンカーが原油1バレルあたり1ドルの通行料を支払った場合、国内のガソリン価格は1リットルあたり1円程度上昇する可能性があるとされています。 木内氏の試算によれば、通行料がガソリン価格に転嫁されたとしても、その影響は限定的であると分析されています。
中東情勢緊迫化と日本のエネルギー源
世界の原油輸送の生命線とも言えるホルムズ海峡で、緊張が続いております。イラン当局が、この海峡を通過する船舶に対して事実上の通行料を徴収する動きを見せているとのことです。野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏の試算によりますと、仮に日本の石油タンカーが原油1バレルあたり1ドルの通行料を支払った場合、国内のガソリン価格は1リットルあたり1円程度上昇する可能性があるとされています。
日本は、世界の原油供給量の約9割を中東からの輸入に頼っており、その多くがホルムズ海峡を通過します。この海峡が何らかの理由で封鎖されたり、航行が困難になったりすることは、日本のエネルギー安全保障にとって、まさに死活問題と言えるでしょう。今回の通航料徴収の動きは、中東情勢の不安定さが、私たちの生活に直結するエネルギー価格へ影響を及ぼす可能性を改めて示唆しています。
通航料負担、家計への影響は限定的か
木内氏の試算によれば、通行料がガソリン価格に転嫁されたとしても、その影響は限定的であると分析されています。原油価格が1バレル100ドルだった場合、通行料1ドルは原油価格の約1%に相当します。また、補助金がない場合の現在のガソリン価格(1リットル220円程度)を基準に計算すると、1リットルあたりの上昇幅は1.15円から1.32円程度と推計されています。
さらに、この程度の原油価格の上昇が日本の実質国内総生産(GDP)に与えるマイナス影響は、年間でわずか0.01%程度と見込まれており、経済全体への打撃は軽微であるとの見方もあります。事実上、輸送が滞っていたホルムズ海峡での船舶の航行が、何らかの形で再開される可能性が出てきたことは、一定の朗報と捉えることもできるでしょう。
航行再開の兆しと残る原油供給不安
実際に、商船三井が保有するLPGタンカーがホルムズ海峡を通過したことが明らかになりました。日本船主協会によれば、イランによる攻撃とされる事案以降、海峡を通過した日本関係船舶は3隻に上ります。これらの船舶が実際に通行料を支払ったかは公表されていませんが、航行が再開されつつある兆候は確認できます。
しかし、木内氏は、こうした動きがあったとしても、「原油の中東依存度が高い日本などアジア各国で原油不足への懸念が解消されるかは予断を許さない」と警鐘を鳴らしています。たとえホルムズ海峡を通過できたとしても、安全性が十分に保証されなければ、日本から新たにタンカーをペルシャ湾へ派遣することは困難だからです。つまり、海峡の通過が容易になったとしても、それが直ちに安定的な原油供給につながるとは限らないのです。
正常化への道遠く、外交解決が鍵
今回のホルムズ海峡での動きは、イランの戦略的な思惑も絡んでいる可能性があります。もし多くのタンカーの航行が自由になれば、原油価格は下落する傾向にあります。そうなると、イランがガソリン価格の高騰を通じて米国経済に圧力をかけるという「カード」を自ら手放すことになりかねません。
このため、木内氏は「米国とイスラエルがイランと戦闘停止で正式に合意しない限り、ホルムズ海峡での船舶の航行が正常化し、世界の原油供給と原油価格が安定を取り戻すのは難しい」と指摘しています。つまり、ホルムズ海峡の安定を取り戻すためには、軍事的な緊張緩和だけでなく、根本的な外交解決が不可欠であるということです。高市早苗総理大臣が各国首脳と連携し、外交努力を続けることの重要性が、改めて浮き彫りになっています。日本のエネルギー安全保障は、こうした国際情勢と密接に結びついており、楽観視できない状況が続いているのです。
まとめ
- ホルムズ海峡でイラン当局による通行料徴収の動きがあり、ガソリン価格への影響が試算された。
- 試算では、1リットルあたり1円程度の値上がりが見込まれるが、経済全体への影響は軽微とされている。
- 日本関係船舶による海峡通過は確認されているが、原油供給不安の解消には至っていない。
- 海峡の正常化には、米国、イスラエル、イラン間の外交的解決が不可欠である。
- 日本のエネルギー安全保障は、中東情勢の不安定さの影響を受けやすく、引き続き注視が必要である。