2025-11-11 コメント投稿する ▼
森友問題で約5万4000枚の新文書開示も高市首相が再調査拒否、極秘資料で政治忖度明らかに
高市早苗首相が2025年11月5日の参議院代表質問で「新たな事実が判明していないため、改めて第三者による調査が必要とは考えておりません」と答弁したことが波紋を広げている。 しかし、石破前政権下で開始された森友文書の開示により、これまでに約5万4000枚の文書が公表され、政治家からの働きかけや財務省の忖度を示す新事実が続々と判明している。
森友事件を呼び覚ました高市首相の国会答弁
森友学園問題の再調査を迫られた高市首相は、11月5日の参議院代表質問で第三者調査の必要性を完全に否定した。「第三者による調査については、これまでに国会の要請に基づく会計検査に加え検察当局の捜査が行われ、不起訴処分になったと承知している」と述べ、既存の調査で十分との立場を示した。
しかし、高市首相のこの答弁は客観的事実に反している。石破前政権の下で2025年4月に始まった一連の森友文書開示により、これまでに約5万4000枚の文書が公表され、新事実が続々と判明しているからだ。
片山さつき財務大臣も11月7日の会見で、「新たな事実とお感じになって報道されるものもあると思いますけれども、更なる対応が必要となるような新たな事実は確認されていない」と苦しい説明を行った。「更なる対応が必要な」新事実はないという限定的な解釈で高市首相の答弁を補完しようとしたが、開示された資料の内容を前にすると説得力を欠いている。
「必ず売却する必要がある案件」と明記された極秘資料
開示された文書の中で最も衝撃的なのは、財務省近畿財務局で森友学園との交渉を担当していた職員が作成した内部資料だ。この資料は「取扱注意 学校法人森友学園への売払事案について 担当者限定参考資料」と題され、「あくまでも内部担当者限定の参考資料であることにご注意願います」との但し書きがついている。
売り払い直後の2016年7月に異動となった担当者が、後に森友事件で命を絶つことになる赤木俊夫氏らに引き継いだ文書として、今年6月の開示で明らかになった。資料には冒頭で「本件は非常に特殊かつ複雑な事案であるため」「なぜこのような状況に陥ったのか疑問をお持ちになると思います」と記され、何かまずいことになったことを暗示している。
最も重要なのは、近畿財務局のナンバー2だった山岸晃総務部長が「必ず売却する必要がある案件であるため、毎年、売払いについて双方が交渉することをルール化する書面を検討せよ」と指示していたことだ。なぜ「必ず売却」しなければならないのか。その背景として浮上するのが、2014年4月に安倍昭恵氏と森友学園の籠池理事長夫妻が国有地前で撮影したスリーショット写真である。
「森友学園の真相がついに明らかになりそうだ」
「高市首相は新事実がないと言うが、これは明らかに嘘だ」
「政治家の関与が文書ではっきりしている。これでも調査しないのか」
「赤木さんの死を無駄にしてはいけない。真相解明が必要」
「財務省は隠蔽体質を改めるべき。国民を馬鹿にしている」
政治家からの働きかけが明記された資料
極秘資料では、森友事案が政治案件であることが明確に記されている。「取得要望時から現在までに国会議員関係者6名、弁護士3名が関わっている事案である」とし、具体的な政治家の名前と働きかけの内容が詳細に記録されている。
鴻池祥肇参議院議員については「学園が貸付けを希望しているため、相談に乗ってやってほしい」、平沼赳夫衆議院議員については「学園から貸付料が高額であると聞いているが、何とかならないか」、鳩山邦夫衆議院議員についても同様の減額要望が記載されている。
そして6人目の国会議員関係者として「安倍総理夫人(夫人付の谷査恵子氏から本省審理室) 貸付料が減額できる可能性について相談」と明記されている。政界からの働きかけがこれほどあからさまに記された文書は極めて珍しく、ほぼすべてが貸付料の減額という金銭上の優遇を要望している内容だった。
資料では、近畿財務局が学園との交渉を打ち切りたいと考えていたものの、「この相談が陳情(鴻池参議院議員秘書)を伴ったものであり」本省からの指示により要望に応じることになったと説明している。「財務局が前面に立って断わらないこと」との指示があったことも明記されており、政治的圧力により通常とは異なる特例的な対応が行われた実態が浮かび上がっている。
8億円値引きの正当性が根底から崩れる
さらに深刻な新事実も判明した。問題の国有地で大阪航空局が2024年から実施したボーリング調査の結果、地中のゴミは値引き時の想定の4分の1しかないことが2025年10月に公表された。8億円余りの撤去費用を根拠とした値引きの正当性が根底から崩れたのだ。
2017年2月に行われた財務局と大阪航空局の打合せ記録でも「9.9メートルの深度に埋設物があったのかは、視認していない」ことが明記されており、地中深くのゴミは確認されていなかったことが判明している。
近畿財務局の池田靖統括国有財産管理官は、森友学園の小学校について工事業者らに送ったメールで「瑞穂の國記念小學院開校に向けご協力いただきありがとうございます」と、まるで森友学園の一員のような文面を書いていた。さらに池田統括は、大阪航空局の撤去費用算定について「当初の7億弱の積算が提出されたとき、不動産を扱う者の感で『これなら売り払いは不調になるな』的な発言を航空局にしたように思う」と証言しており、値引き額を増やすよう促していたことが明らかになっている。
赤木雅子氏の再調査要請と高市首相の対応
改ざんを強いられて自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫氏の妻、赤木雅子氏は11月4日、高市首相の事務所に直筆の手紙を届け、第三者による再調査を求めた。手紙では「高市総理が自民党総裁選で語った『公平で公正な日本を実現』するためにも、総理の決断で再調査を実現してください」と訴えている。
「夫が亡くなったのは三月七日。高市総理のお誕生日と同じというのもご縁を感じます」という個人的な思いも込められた手紙だった。この手紙は11月10日の衆議院予算委員会で立憲民主党の川内博史議員によって取り上げられ、川内議員は俊夫氏の遺品のネクタイを締めて質問に臨んだ。
高市首相は手紙を読んだことを明かし、「ご遺族のお気持ちについてはしっかりと受け止めさせていただきました」と答えた。川内議員が大阪航空局の調査でゴミの量が大幅に少なかった事実について「新たな事実であるということは認めますね」と迫ると、高市首相は「埋設物の量が違っていたということは公表されたということです」と遠回しながら新事実であることをようやく認めた。
しかし、それでもなお「第三者による再調査が改めて必要だとは考えていない」と拒否の姿勢を崩さなかった。
森友事件は、安倍政権を揺るがした疑惑として国民の記憶に残っているが、真相は依然として闇の中にある。開示された大量の文書により政治的忖度の実態が次々と明らかになる中で、高市首相と片山財務大臣が「苦しい言い訳」を重ねて再調査を拒否し続ける姿勢は、国民の政治不信を一層深めるものといえる。公文書改ざんという民主主義の根幹を揺るがす問題について、政府は真摯に向き合う責任がある。