2025-06-26 コメント: 1件 ▼
私立高校無償化に大学生らが反対署名3.6万筆 「公立高校の環境改善こそ優先すべき」
「私立高校の無償化に待った」
大学生らが3.6万筆の署名提出 「まず公立高校の改善を優先すべき」
教育の公平性を問う若者の声
私立高校の授業料を無償化する方針に対して、大学生や高校生らのグループが異議を唱えている。6月26日、文部科学省で記者会見を開いたのは、大学1年生の秀島知永子さんら。署名サイトを通じて3月から始めたオンライン署名は、すでに3万6000筆以上に達し、社会的な反響を呼んでいる。
署名活動のきっかけは、今年2月に与党を含む3党で私立高校の無償化が合意されたことだった。秀島さんは「予算成立の道具として扱われ、公立側の意見が反映されていないことに強い違和感を持った」と語る。署名の呼びかけ文では、教員不足、校舎の老朽化、教員の過重労働など公立高校が抱える構造的な課題が放置される中で、「私立だけが支援対象になるのは不公平」と訴えている。
「まずは公立をどうにかしてから無償化して」
「都市部だけ得する制度にならない?」
「予算あるなら公立の先生増やして」
「署名が3万超えって本気の声だ」
「一律じゃなくて必要な人に届く制度にして」
「都市部偏重の政策に地方の生徒が危機感」
会見には、高校生も同席した。長野県の高校1年生、森栗之介さんは「地方の公立高校では、授業内容も設備も都市部とは大きく違う。このままでは“支援される私立”と“取り残される公立”という二極化が進む」と危機感をあらわにした。
また、首都圏の高校3年生篠原一騎さんも「地方の私立と都市部の私立では運営状況が違いすぎる。一律の無償化では支援が届くべきところに届かない可能性がある」と指摘。代わりに給付型奨学金の拡充や、学校ごとに実情に即した支援の導入を求めた。
こうした声に共通しているのは、「教育支援は平等ではなく“公平”であるべき」という強い問題意識だ。金額の一律支給ではなく、地域や学校の実態に応じて柔軟に対応する必要があるという提言は、現場のリアルな声に根差している。
求められるのは「公立の底上げ」
署名活動では、政策に対して3つの要望が示された。
1. 私立高校の授業料無償化の範囲を公立高校と同水準に据え置くこと
2. 教員配置・校舎改修など、公立高校の質向上に行政が責任を持って取り組むこと
3. 経済的支援として、高校生向けの給付型奨学金制度を拡充すること
公立校の教育環境改善に向けた提言は、単なる「反対運動」ではなく、具体的な代替案を伴った建設的な提起でもある。
大学生代表の秀島さんは、「予想では数千筆程度だと思っていた署名が、3万6000筆を超えた。それだけ多くの人が今の制度設計に疑問を持っているということ。財源もマンパワーも限られる中で、限られた資源をどこに投じるか、よく考えてほしい」と語った。
政治主導の“バラマキ”に若者が一石
今回の私立高校無償化は、2月の3党合意で突如浮上した経緯もあり、「選挙対策ではないか」「公立の声が無視されている」といった批判もある。中高生・大学生たちがこうして直接声を上げ、数字(署名)という形で可視化している点は、教育政策における世論の分岐を浮き彫りにしたといえる。
政治主導の政策が「公平感」や「現場の実態」とかけ離れたものであれば、真に支援が必要な子どもたちに届かない。そのことを当事者世代が訴える姿勢は、政策立案者にとっても無視できないはずだ。
秀島さんたちは今後も署名活動を継続し、議論の推移を注視しながら必要に応じて新たなアクションを起こす方針だという。