2025-11-03 コメント: 1件 ▼
議員定数削減の狙い 比例代表削減で民意切り捨て、316億円の政党助成金は温存
自民党の派閥裏金事件を受けた「政治改革」という名目で持ち出された施策ですが、その実態は政党の党利党略に基づく民意の切り捨てに他なりません。 自民党と維新の連立協議は、自民党の派閥裏金事件を受けた「政治改革」を大きな焦点としていました。 自民党の裏金事件に対する国民の不信感から、「税金のむだ」という声が広がっています。
自民党と日本維新の会が今国会での成立をめざす衆院議員定数の1割削減は、議会制民主主義の根幹に関わる問題です。自民党の派閥裏金事件を受けた「政治改革」という名目で持ち出された施策ですが、その実態は政党の党利党略に基づく民意の切り捨てに他なりません。国民の参政権を脅かす重大な問題について、その狙いと矛盾を検証します。
「政治改革」の名の下の論点のすり替え
自民党と維新の連立協議は、自民党の派閥裏金事件を受けた「政治改革」を大きな焦点としていました。公明党が26年間続いてきた連立を離脱した理由も、政治とカネを巡る信頼喪失でした。維新はこれまで「政治改革」として企業・団体献金の禁止を主張してきましたが、連立協議で自民党が応じないとみるやすぐさま棚上げにしました。その代わりに維新が突如、連立の「絶対条件」として持ち出したのが議員定数削減です。
これは明らかに、自民党との政策的隔たりを隠すための論点のすり替えです。維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は10月17日のテレビ番組で「国会議員の定数が多すぎる。議員定数の大幅削減を絶対やるべきだ」と語りました。しかし、この認識は国際比較のデータで明確に否定されます。
「議員削減で税金節約?50人減らしても年35億円だけ。本当に改革なら政党助成金315億円廃止が先じゃ」
「民意を反映させるのが議会なのに、少数政党がいなくなったら国民の声は届かない」
「比例区から消される議席?大政党に有利な仕組みじゃないか」
「維新は『身を切る改革』と言いながら、自分たちの会社に公金流す。信用できない」
「憲法では主権者である国民の代表が国会議員。その数を減らすことは参政権への侵害だ」
国際比較で明らかな「少なすぎる」議員数
日本の国会議員定数は現在465ですが、人口100万人当たりに換算すると約5・6人です。経済協力開発機構(OECD)加盟国38ヶ国中で36位という水準で、実は世界的に見ても非常に少ないのが現状です。主要7ヶ国(G7)の中でも日本はイギリスに次いで2番目に少なく、イギリスと比べると約4分の1程度の水準です。
これは何を意味するのか。日本の衆議院議員1人が代表する国民の数は約26万5千人と、欧州の主要国の2倍以上に達します。つまり、国民の多様な声が国会に届きにくい状況が既に存在しているのです。日本国憲法は前文冒頭で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…」と規定しています。実態も把握せず、「多すぎるから」と乱暴に削減しようとすることは、国民の参政権からいって大問題なのです。
民意を反映する比例代表の削減戦略
重大なのは、削減の対象が比例代表に狙いを定められている点です。維新の藤田文武共同代表は10月24日の記者会見で「比例でバッサリいったらいい」と述べています。衆院465議席のうち289議席は小選挙区、176議席が比例代表です。吉村氏がいうように1割削減した場合、比例代表は120台まで削られることになります。
小選挙区制は大政党に有利で、最大得票の候補者1人しか当選できないため、議席に結びつかない「死票」が多く発生します。2024年の総選挙では、289小選挙区で死票率が50%以上となった小選挙区が163に及び、全国で約2828万票が活かされていません。一方、比例代表は票数に応じて議席を配分するため、民意を正確に反映する仕組みになっています。比例代表の削減は、小選挙区制が持つゆがみをさらに拡大させ、多様な民意を切り捨てることにつながるのです。
「税金のむだ」は本当に解決するのか
自民党の裏金事件に対する国民の不信感から、「税金のむだ」という声が広がっています。しかし、議員50人削減で実現する財政削減は年間約35億円程度にとどまります。議員の数を減らしても、金権体質が変わるわけではありません。
本気で「税金のむだ」に切り込むなら、日本共産党を除く全ての政党が年間総額約315億円を分け合っている政党助成金を廃止するべきです。2025年の政党助成金配分を見ると、自民党は136億3952万円、維新は32億922万円を受け取っており、両党の運営資金の大半が税金で賄われています。10月には今年3回目の政党助成金の支出があり、自民党は31億7133万円、維新は7億7780万円を受け取ったばかりです。
さらに、維新の藤田文武共同代表を巡っては、11月2日号の赤旗で、公設秘書が代表する会社への約2千万円の公金支出疑惑が報じられました。そのうち約94%、約1965万円が政党助成金など税金を原資とする公金だったというものです。政党助成金を身内に還流させているような維新に「政治改革」を語る資格はありません。
国民の「痛み」を押し付けるための取引材料
2012年には「身を切る改革」と称して議員定数削減と引き換えに消費税率10%増税が押し付けられました。今回の自維政権の連立合意文書には、医療費4兆円削減や国内総生産(GDP)比2%を超える大軍拡など、国民の生活を破壊するメニューがずらりと並んでいます。維新の松井一郎元代表は連立合意に含まれる「社会保障改革」について「痛みを伴う部分が出る」と明言し、病床11万床の削減や高齢者の医療費負担増といった「痛み」を国民に押し付ける狙いをあけすけに語っています。
議員定数削減は、こうした国民への負担増を正当化するための取引材料に過ぎないのです。