2025-08-05 コメント投稿する ▼
福島原発事故原告団、美浜原発新設方針の撤回を福島県知事に要望 事故未解決のまま推進と批判
福島原発事故原告団、美浜原発新設方針の撤回を福島県知事に要望
関西電力が福井県美浜町で進めようとしている美浜原発の新設計画を巡り、東京電力福島第1原発事故の集団訴訟原告団と弁護団が8月5日、福島県の内堀雅雄知事に対し、計画撤回を求める意見表明を行うよう要望書を提出した。原告団は、事故から14年以上経っても被害が続く福島の現状を無視した動きだと厳しく批判し、原子力事業者としての適格性を疑わせると訴えている。
事故の教訓を軽視した方針
要望書では、関電の方針が福島原発事故の教訓を無視しており、被害者の存在や苦しみを顧みないものだと指摘。「被害が続く中での新設計画は、事故から何も学んでいない証拠であり、被災地の人々を再び危険にさらす可能性がある」として、計画の撤回を強く求めた。
記者会見した原告団長の中島孝さん(69)は、「原発事故の問題が未解決のまま、新設に突っ走っていいのか。我々は断固反対する。知事はしっかりと反対の意思を示すべきだ」と訴えた。
「事故の傷が癒えない中で新設を進めるのは無責任」
「被害者不在の議論は許されない」
「安全性より経済性を優先しているように見える」
「福島の経験を全国の原発政策に反映すべきだ」
「知事が声を上げなければ、被災県の存在意義が問われる」
こうした声はSNSでも広がり、被災地の意見を無視したエネルギー政策への批判が高まっている。
美浜原発と新設計画の経緯
美浜原発は1970年に1号機が運転を開始し、老朽化や耐震性の問題などから廃炉が決定した原子炉を含む複数の号機を抱えてきた。関電は2010年、1号機の建て替えを視野に地質調査を始めたが、2011年3月の福島第一原発事故を受け、安全性や防災体制の見直しを迫られ計画を中断していた。
今回の地質調査再開方針は、事実上の新設計画再始動とみられる。関電は再生可能エネルギーの導入や火力発電との組み合わせを進める一方で、安定供給と脱炭素を理由に原発の新設・更新も視野に入れており、美浜原発の新設はその象徴的なプロジェクトの一つとされる。
福島県知事への要望の意味
福島県の内堀知事はこれまで、県外の原発計画に直接関与する立場にはないとの姿勢をとってきた。しかし、福島第一原発事故の被災地として、新設計画に反対の声を上げることは、原子力政策全体に影響を与える可能性がある。原告団と弁護団は、被災県のトップが明確な反対表明を行うことで、国や事業者の計画見直しを促せると期待している。
全国に広がる原発政策論争
原発の新設や再稼働は、日本のエネルギー政策において賛否が分かれる最も大きな論点の一つだ。推進派は、温室効果ガス削減やエネルギー安全保障を理由に原発の活用を支持するが、反対派は事故リスクや高レベル放射性廃棄物の処理問題を懸念し、特に福島事故の教訓から原発依存度を減らすべきだと訴えている。
美浜原発新設方針は、他の原発立地地域にも波及効果をもたらす可能性がある。被災地からの反対表明は、全国の自治体や市民運動にとって象徴的な出来事となるだろう。
今後の焦点
関電は地質調査を皮切りに、地域住民や自治体との協議を進めるとしているが、福島からの強い反対の声が計画にどの程度影響するかは不透明だ。政府もエネルギー基本計画で原発の活用を位置づけており、被災地の意見が国の政策に反映されるかが注目される。
今回の要望書提出は、福島事故の被害者が原発政策に対して直接的な発信を行う数少ない事例であり、その重みは大きい。事故から14年以上が経過した今も続く避難生活、健康被害、地域経済の停滞といった現実を、計画推進側がどう受け止めるかが問われている。