2025-05-23 コメント投稿する ▼
外国人支援の現場に変化 渡部カンコロンゴ清花氏が入管庁研修で「難民のリアル」伝える
出入国在留管理庁の研修でNPO代表が講演
外国人労働者や難民を取り巻く現場の課題について、入管職員の理解を深めるための取り組みが進んでいる。2025年5月、全国の入国審査官らを対象に行われた出入国在留管理庁の職員研修で、NPO法人WELgee代表理事の渡部カンコロンゴ清花氏が講師として登壇。難民支援や在留外国人の現状について講義を行い、大きな反響を呼んだ。
「いい人と出会い、いい企業と出会えたら、彼らの日本での活躍の幅が広がることも」
と語る渡部氏は、日本で生活を始めた難民や避難民が社会とつながりを持つことで、前向きな未来が築けることを強調した。
入管庁の役割拡大と職員の課題
2019年、入国管理局は「出入国在留管理庁」として再編され、在留支援の役割も担うようになった。当時の背景には、外国人労働者の受け入れ拡大や中長期滞在者の急増があった。特定技能制度の導入もこの時期であり、現在では在留外国人数は370万人を超えている。
「単なる“入国管理”ではなく、“在留支援”が求められるようになった」
と渡部氏が指摘するように、現場では日々の審査や手続きに加え、生活支援や人道的配慮を求められるケースが急増している。
難民支援のリアルに触れる時間
講義では、ウクライナからの避難民や補完的保護対象者など、近年日本にやってきた人々の実情や、難民認定審査の困難さにも言及。現場職員からは、
「日々の業務では多くの件数を処理するだけで精一杯で、個々の背景に向き合う余裕がない」
という声が寄せられたという。
これに対し、渡部氏は
「想像できる幅が少しでも広がっていたら嬉しい」
と語り、制度運用の背後にある人間の物語への理解が、行政の現場でも必要だと訴えた。
デジタル化と持続可能な制度設計を
外国人受け入れを国家戦略とするのであれば、現場の負担を軽減し、制度の透明性と安定性を担保する必要がある。渡部氏は、
「人口が減少する中、国際社会に背を向けるのではなく、多様な人々と共に生きる仕組みを描くことが重要」
と訴え、行政のデジタル化や長期的視点に立った制度設計の必要性を強調した。
共生社会の実現へ一歩ずつ
今回の講義は、入管業務に従事する職員が日々の業務に追われる中でも「誰のための制度か」という本質を見直す機会となった。現場とNPOの連携が生まれることで、より柔軟で人道的な外国人支援の枠組みが築かれていくことが期待される。