2025-07-30 コメント投稿する ▼
泊原発3号機、審査通過で再稼働へ前進 焦点は地元同意と自治体の線引き
泊原発3号機、12年越しの審査通過
北海道電力が2027年中の再稼働を目指す泊原発3号機(北海道泊村)が、ついに原子力規制委員会の新規制基準審査を通過した。30日の定例会で、規制委は「安全対策は基準を満たしている」とする審査書を正式に認可。これにより、東日本大震災以降で審査を通過した原発は全国で11原発18基に達した。
泊原発3号機は出力91.2万キロワットを誇る国内でも比較的新しい原発。2012年5月に定期検査入りで停止し、以後約12年間運転していない。北海道電力は2013年、3号機を含む全基の再稼働を申請し、特に新しい3号機の優先審査を求めてきた。審査は国内でも最長級となったが、今年4月に審査書案が了承され、今回の正式認可へとつながった。
安全対策、想定を大幅強化
審査にあたって北海道電は、耐震・津波対策を大幅に見直した。当初、最大地震動は550ガル、最大津波高は7.3メートルと設定していたが、度重なる再計算と指摘を受け、最終的には地震動を693ガル、津波高を17.8メートルに引き上げた。
さらに、防潮堤は海抜19メートルの高さで建設中。延長は約1,200メートルに及び、2027年3月の完成を目指して工事が進められている。これにより北海道電は、同年内の再稼働を現実的な目標と位置づけている。
規制委からは終盤になって、原発構内に停泊予定だった核燃料輸送船について「津波で流され防潮堤と衝突するリスク」が指摘された。これを受けて北海道電は2024年6月、新たな輸送ルートとして約1キロ北側の敷地外に新港を建設し、原発まで約1.8キロの専用道路で結ぶ対策案を発表した。
再稼働のハードルは「地元同意」
技術的な審査は通過したが、再稼働には「地元同意」という政治的ハードルが残されている。特に焦点となっているのは、「どこまでを地元とするのか」という範囲の線引きである。
現在、北海道電は泊村と北海道を再稼働に向けた主要な協議相手としつつも、それ以外の周辺自治体をどのように扱うかについては明示していない。過去の再稼働では、電力会社が「地元」とみなす範囲の曖昧さがトラブルの火種となってきた。今回も同様の混乱が予想される。
北海道の鈴木直道知事も、再稼働について明確な賛否を示していない。慎重な姿勢を崩さない一方、道としての最終判断時期も示しておらず、議論の進展は見通せない。
市民・有権者から賛否の声
泊原発の再稼働については、道内外の市民から様々な意見が寄せられている。
「再稼働が地域の経済を支えるのは分かるけど、万が一の時に責任は取れるのか」
「これだけ時間かけたのなら、科学的には安全なんじゃないかと思う」
「泊村だけじゃなく、札幌や小樽にも影響ある話なのに同意範囲が不明確すぎる」
「なぜまだ原発に頼るのか。再エネの推進にもっと予算を回すべき」
「福島の記憶を忘れたとは言わせない。本当に納得できる説明が必要」
北海道電力にとっては、技術面での関門をクリアした今、地域との信頼構築と説明責任が問われる段階に入ったといえる。