2025-04-24 コメント投稿する ▼
北海道の洋上風力発電計画、スケトウダラ漁に危機感 漁業者が訴える「産卵場を守れ」
北海道の洋上風力発電計画、漁業との衝突が鮮明に
北海道で進行中の洋上風力発電計画が、地元漁業との深刻な対立を引き起こしている。4月18日、石狩市で開かれた学習会で、北海道機船漁業協同組合連合会(きせんれん)の常務理事・原口聖二氏が講演し、洋上風力発電が漁業に与えるリスクについて強い警鐘を鳴らした。特に欧米の事例を引き合いに出し、現地では「漁業との共存共栄」という美名とは裏腹に、漁業者による抗議行動や事業者の撤退が相次いでいる現実を語った。
欧米での実態――漁業者の抗議と事業者の撤退
原口氏はまず、欧米における洋上風力発電の現実を紹介した。フランスでは風力発電が魚の産卵場に影響を与え、漁業者たちが抗議デモを実施。漁師たちは水産当局の事務所に魚を投げ込み、風力発電による騒音が海洋生物を脅かしていると訴えた。またアメリカでは、メイン州のロブスター業界が抗議集会を開き、洋上風力発電に対する訴訟を検討する動きも見られる。こうした状況に対し、ノルウェーの漁業団体は「漁業資源が政治的圧力で奪われようとしている」と警告している。
日本では「漁業と共存」との美名で洋上風力発電が推進されているが、原口氏はこれが事実を歪曲したものであると指摘する。海外では漁業者たちが風力発電に反対し、すでに撤退する事業者も増えている現実を強調し、「日本でも同じ道をたどる可能性が高い」と警鐘を鳴らした。
スケトウダラ漁に迫る危機――北海道の産卵場が風力発電区域に
特に深刻なのは、北海道沖でのスケトウダラ漁が風力発電によって脅かされるという問題だ。スケトウダラは音を使って求愛行動を行う魚であり、風力発電による騒音や振動が繁殖に悪影響を及ぼす可能性がある。原口氏は、スケトウダラの産卵場が風力発電の計画区域に重なっていることを強調。風力発電が稼働すれば、騒音で繁殖が妨げられ、漁獲量が減少する恐れがあると訴えた。
北海道沖のスケトウダラは、日本国内で重要な水産資源であり、年間20万トンが水揚げされている。もし産卵場が破壊されれば、その影響は北海道全体の漁業に及ぶことは避けられない。原口氏は「産卵場を失えば、地域の漁業は壊滅的な打撃を受ける」と警告した。
風力発電の経済的リスク――持続可能性に疑問
風力発電は環境に優しいエネルギーとされているが、実際には建設や維持に多大なコストがかかる。原口氏は、風力発電設備の建設には膨大なコンクリートや金属資源が必要で、その製造過程で大量のCO2が排出されることを指摘。また、維持コストも高く、欧米では採算性の悪化から撤退する企業が相次いでいると述べた。
日本でも例外ではなく、今年2月には三菱商事が522億円の減損損失を計上し、事業の持続性に疑問が浮上している。風力発電は環境保護という名目で推進されているが、その実態は利益を追求する企業が漁業を犠牲にし、地域経済を揺るがすものである可能性がある。