2025-06-09 コメント投稿する ▼
大石賢吾知事、政治資金問題で8月の給与を全額返上へ 県民の信頼回復なるか
大石知事、給与全額カットを表明
長崎県の大石賢吾知事が、自身の政治資金に関する一連の問題の責任を明確にするため、8月分の給与全額(126万円)を返上する姿勢を示した。県は6月9日、この措置を盛り込んだ給与条例の改正案を、16日から開会する県議会定例会に提案すると発表した。
知事が給与を自発的に全額カットするのは極めて異例であり、県政における説明責任のあり方に一石を投じる形となっている。県はこの判断について、「一連の問題で知事の責任を明確にするため」と説明しているが、県議会内からは「知事の説明がまだ不十分」との声が根強い。
知事の給与減額という政治的ジェスチャーに対して、県民の間では「パフォーマンスではないか」「説明が先では」といった疑念も広がっており、今後の対応が注目されている。
疑惑の詳細と司法判断
問題の発端は、2022年の長崎県知事選挙にさかのぼる。大石知事の後援会が自民党県議側から286万円を借り入れたとする記載が政治資金収支報告書にあり、公職選挙法違反(虚偽記入)の疑いで告発された。さらに、選挙運動費用収支報告書と政治資金収支報告書に同じ2000万円を二重に記載するという不自然な処理があり、「迂回寄付」や「架空の資金移動」といった疑念が持たれた。
ただし、このうち借り入れに関しては、今年1月に長崎地検が不起訴処分とした。一方、二重計上について大石知事は「公務に忙殺され、報告内容を十分把握していなかった」と釈明。意図的な虚偽記載を否定しているが、県議会の議員たちからは「公務に忙しいというのは言い訳にならない」「意図がなければ二重記載にはならない」といった厳しい指摘も飛んでいる。
知事への不信感と説明責任の重さ
知事の給与返上の決断が報じられると、SNS上では賛否両論の声が交錯した。
「給与返上するなら説明責任を果たしてからにしてほしい」
「金を返せばいいってもんじゃない。何をどう処理したのか、県民は知りたい」
「悪意がなかったとしても、管理のずさんさは看過できない」
「責任を取るなら、給与じゃなくて立場で示してほしい」
「県民への誠意が見えない。謝罪も説明もないのは不誠実」
これらの声は、大石知事の対応が県民の不信を拭いきれていないことを物語っている。
一部の県議からは、「議会の場での知事の説明が必要不可欠だ」として、委員会への出席を強く求める声も上がっている。現在のところ、知事自身の出席については明言されていないが、求めに応じて登壇すれば、今後の県政運営に一定の前向きな影響を与える可能性もある。
補正予算案は58億円増、子育て支援も
こうした政治的な混乱のさなか、長崎県は同日、総額58億4700万円の一般会計補正予算案も発表した。医療従事者の処遇改善支援として11億8800万円を充てるほか、高校授業料の実質無償化に対応するため、年収約910万円以上の世帯への就学支援金として6億4800万円を計上するなど、教育や医療の分野での充実策が含まれている。
補正予算の規模としては中程度だが、財政支出のバランスと持続性を問う声もある。特に、就学支援金の対象拡大については「一時的なバラマキにならないか」という懸念もあり、本来であれば恒久的な減税や負担軽減策と併せて議論すべきとの指摘もある。
なお、定例会の会期は6月16日から7月9日までの24日間と設定されており、一般質問は6月20日、23日、24日に行われる予定だ。ここで知事が自らの言葉で県民に説明するのか否かが、今後の県政運営に大きく影響しそうだ。
政治的パフォーマンスではなく誠実さを
今回の給与全額カットの決断は、表面的には責任を取る姿勢として受け取れる。しかし、それが本当の意味で信頼回復につながるかどうかは、今後の説明姿勢と誠実な対話にかかっている。
県民が求めているのは、一時的な謝罪や給与返上といったパフォーマンスではなく、誤りの経緯を丁寧に説明し、今後どう透明性を高めるのかという再発防止策の明示だ。政治資金の処理における信頼性は、地方行政においても決して軽視してよい問題ではない。大石知事は、責任ある立場として、県政を支える県民の目を真摯に受け止める必要がある。