刑事デジタル法案、憲法35条違反の懸念浮上 秘密保持命令で個人情報保護に疑問

2025-05-08 コメント投稿する

刑事デジタル法案、憲法35条違反の懸念浮上 秘密保持命令で個人情報保護に疑問

刑事デジタル法案、捜査と憲法の狭間 参院参考人質疑で賛否明確に


2025年5月8日、参議院法務委員会で刑事デジタル法案に関する参考人質疑が行われた。この法案は、裁判所の令状に基づいてインターネット上の電子データを捜査機関が取得できる「電磁的記録提供命令」を新たに設けるものだ。しかし、その内容をめぐり憲法との整合性や個人情報保護に関する懸念が次々と示された。

憲法35条「特定性」の壁


まず、日本共産党の仁比聡平参議院議員は、この法案における電子データの取得が、ネット空間やサーバー上に無限に存在することから、憲法35条が求める「捜索・押収の場所や物の特定」を満たせないと問題視した。仁比議員は、「どこからどの情報を取得するのかを明確にしなければ、無差別に個人情報を収集する恐れがある」と指摘。

この意見に対し、立命館大学大学院法務研究科の渕野貴生教授も同調。「憲法35条が求める特定性を満たすのは不可能です」と述べ、電子データの特性上、情報の範囲を明確に絞り込むことは難しいとした。

押収の乱用と無罪証拠隠し


さらに、日本弁護士連合会の河津博史刑事調査室長は、現行の捜査でも、令状をもとに大量の物品が内容を確認せずに押収されるケースがあると指摘。特に、捜査機関が無罪を示す証拠を隠すような事例もあり、証拠管理の適正性に疑問が残ると強調した。

仁比議員は、こうした実態が十分に法制審議会で検討されていなかったことを問題視し、「実務における証拠の管理が不透明では、法案の信頼性を確保できない」と批判した。

秘密保持命令の懸念 個人の権利を奪う可能性


法案に含まれる「秘密保持命令」も議論の的となった。これは、捜査機関がデータを取得した事実を関係者に知らせないよう義務づけるものだ。仁比議員は「本人が知らないうちに自分の情報が捜査機関に渡り、個人情報が丸裸になる恐れがある」と強く批判。

渕野教授も、個人が捜査対象にされたことを「偶然知ることができた場合にのみ」不服申し立てが可能な現状を「権利とは呼べない」と指摘し、捜査の透明性と個人の権利保障が不十分であるとした。

国民に理解されにくい用語の問題


また、参考人らは法案に含まれる「記録」「移転」といった用語も分かりにくいと指摘。「記録」とはデータのコピーを残すこと、「移転」とは元データを削除し提供することを意味するが、この説明が法律上十分に明確でないため、一般国民にとって理解しにくい構造になっている。

まとめ:法案の透明性と適正手続きが鍵


* 刑事デジタル法案は、捜査機関が電子データを効率的に取得できる仕組みを導入するものだが、憲法35条の「特定性」要件との整合性が疑問視されている。

* 捜査機関による証拠の不適正管理や、無罪を示す証拠の隠蔽問題も指摘された。

* 秘密保持命令による情報収集は、個人の権利を侵害する恐れがあり、捜査の透明性確保が不可欠とされた。

* 法案内の用語が不明確で、国民にとって理解しにくいとの批判もある。

刑事デジタル法案は、捜査の効率化を図る意図があるものの、憲法との整合性や個人情報保護の観点から、さらなる議論が必要とされている。今後の国会審議でこれらの懸念がどのように解消されるか注目が集まる。

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2025-05-09 13:19:08(S.ジジェク)

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