2025-04-09 コメント投稿する ▼
水俣病被害者の声「生きているうちに救済を」 不合理な線引きに批判高まる
■ 地域で線を引く救済策に「合理性はあるのか」
仁比議員は、熊本や新潟、大阪の地裁で水俣病と認定された原告たちの判決を紹介し、「国の救済策では拾いきれない人たちがまだ大勢いる」と強調。その上で、国が被害者の救済対象を「地域」や「年代」で区切っている現状について、「分断を生むだけで、何の合理性もない」と厳しく批判した。
たとえば熊本県天草市のある被害者は、子どものころから家族と同じ魚を食べて育ったが、漁師だった兄2人は救済対象地域の鹿児島県長島町で働いていたため救われ、自分は救済の対象外とされた。鹿児島県阿久根市の折口地区で育った別の被害者も、魚を日常的に食べていたのに「地域が違う」という理由だけで救済から漏れている。
■ 「症状が出ていても気づかない」除斥期間の問題も
さらに、仁比氏は水俣病特有の症状に長年気づかず、ようやく2015年になって診断されたという被害者の例も紹介。除斥期間(一定期間を過ぎた場合に法的請求ができなくなる仕組み)を理由に救済しないとすれば、「長年苦しんできた人ほど報われない。不条理すぎる」と訴えた。
しかし、浅尾慶一郎環境大臣は「係争中の訴訟について和解は考えていない」「コメントは差し控える」と、冷たい対応に終始。被害者の心情に寄り添う姿勢は見られなかった。
■ 救済人数は7万人超 それでも「氷山の一角」
仁比氏はこれまでに全国で水俣病の救済を受けた人が7万2300人に上るとしつつ、「感覚障害が認められている方だけでも約5万人はいる」と指摘。さらに「どこに暮らし、どんな食生活を送ってきたのかという居住分布を明らかにし、健康調査を行ってすべての被害者を救済するべき」と重ねて訴えた。
水俣病は1956年に熊本県で公式に確認され、有機水銀による公害として社会問題となった。だが、発症の仕組みが複雑なことや、行政の「線引き」によって、多くの人が未だ救済されていないのが現実だ。
高齢化が進む被害者の中には、「もう時間がない」と訴える声も少なくない。被害者の尊厳を守るためにも、国に求められているのは「線引き」ではなく、「寄り添い」だ。