2025-05-08 コメント投稿する ▼
通信情報の目的外利用も懸念 サイバー防御法案、参院委で参考人が警鐘「合憲性に疑問」
通信情報、目的外利用も懸念 参院委でサイバー防御法案を議論
参議院内閣委員会は8日、「能動的サイバー防御法案」に関する参考人質疑を実施し、日本共産党の井上哲士議員が質疑に立った。この法案は、政府が基幹インフラ事業者や民間事業者と協定を結び、通信情報を取得・利用できる仕組みを導入するものだ。だが、通信の秘密や個人情報保護に関する懸念が浮上している。
一方的な同意で通信情報利用? 合憲性に疑問
井上議員は、通信情報の取得が事業者との協定で一方の同意だけで可能となり、具体的なサイバー攻撃の必要性が明確に定められていない点を問題視した。弁護士の齋藤裕氏も、令状なしでの情報取得が可能で、警察の捜査にも利用される恐れがあると警鐘を鳴らした。
齋藤氏は「合憲性が問われる」と指摘。通信の秘密を保障する憲法21条との整合性に疑問が残るとし、現行の法案では通信情報が無関係な目的で使用される可能性が排除されないと述べた。
「大垣事件」の教訓 市民の情報が不当に取得される恐れ
井上議員は過去に発生した「大垣事件」を例に挙げた。この事件では、警察が市民運動を行う市民の個人情報を違法に収集・提供したことが問題となった。井上議員は、この事件を引き合いに出し、同法案が目的外利用で個人情報を不当に取得する危険性をはらんでいると指摘。
齋藤氏も、サイバー攻撃に直接関与していなくても、無関係な市民のパソコンが「踏み台」として利用された場合、通信情報が取得される可能性があると述べた。「これは弾圧にも使われかねない」と、自由な言論や活動が抑制されるリスクを強調した。
国際法との整合性に疑問 「緊急避難」主張に警鐘
また、井上議員は「アクセス・無害化措置」と呼ばれるサイバー防御手段が、他国から武力攻撃とみなされるリスクについても言及。政府は「緊急避難」や「緊急状態」の法理に基づき、この措置が国際法上問題ないと説明しているが、井上氏はこれに疑問を呈した。
国際的なサイバー攻撃の基準をまとめた「タリン・マニュアル2.0」と比較し、政府の説明は要件を甘く捉えていると指摘。齋藤氏も、政府の緊急避難の解釈は「要件を満たさない無害化措置を行うリスクがある」と警告を発した。
法案に求められるさらなる議論
この「能動的サイバー防御法案」は、サイバー攻撃への対応を強化する狙いがあるが、その一方で、個人情報の保護や通信の秘密を侵害する可能性も指摘されている。今後の国会審議では、法案の内容が市民の権利を十分に保護し、国際的な基準とも整合性が取れる形で修正されるかが問われる。