2025-04-24 コメント投稿する ▼
政府が通信情報を丸ごと取得?井上議員が「能動的サイバー防御法案」に警鐘
通信情報を政府が丸ごと取得?
能動的サイバー防御法案に懸念 井上議員「国民監視に道開く」
政府が提出した「能動的サイバー防御法案」をめぐって、日本共産党の井上哲士参院議員が24日、参院内閣委員会で厳しい追及を行った。井上氏はこの法案について、「国民の通信内容を常時監視・収集し、サイバー空間での“軍事的対応”に道を開くものだ」と問題点を浮き彫りにした。
メールもSNSも対象に
政府の答弁によれば、法案では重要インフラ事業者と政府の間で結ばれる協定に基づき、通信情報が提供される仕組みが設けられる。その対象について井上氏が「メールやLINE、SNSの投稿も含まれるのか」と問いただしたところ、内閣官房の小柳誠二審議官は「含まれる可能性はある」と認めた。
さらに、政府は「国内同士の通信は対象外」としているが、井上氏が「除外の義務はあるのか」と指摘すると、小柳氏は「内内通信が含まれるケースもある」との答弁。つまり、政府が通信事業者から受け取る情報には、私たちのLINEのやりとりや、メールの内容までもが含まれる可能性があるということだ。
“非識別化”と“再識別化”の矛盾
政府は取得する情報について「非識別化を行う」としているが、井上氏は「政府が必要と判断すれば、再び識別可能な状態に戻せる」と疑問を呈した。「これはまさに通信の秘密の侵害だ」と、井上氏は強く批判している。
政府側は、情報を取得するのは「サイバー攻撃に関係する情報を抽出するため」とし、「一般国民を広く監視する目的ではない」と説明している。しかし、井上氏は「情報取得後の“目的外利用”を禁止する規定がないことが問題だ」と追及。将来的に監視目的で使われる余地を完全に排除できない以上、「目的外利用を明確に禁止する法的歯止めが必要だ」と訴えた。
先制攻撃のリスクと国際法の懸念
もう一つの大きな問題は、法案が認める「アクセス・無害化措置」だ。これは政府が攻撃元とみられる海外のサーバーに侵入し、マルウェアなどを削除・無効化するという内容。井上氏は、これが相手国にとっては「サイバー攻撃」と受け止められる危険があると警告した。
実際、日米間では2019年に、サイバー攻撃も武力攻撃とみなすという方針が確認されている。井上氏は「日本が先に“アクセス措置”をとれば、相手が反撃の口実とする可能性がある。国家間の緊張を不必要に高める」と述べ、法案の廃案を求めた。
法整備の必要性とその限界
政府はサイバー防衛強化の必要性を掲げ、インフラ事業者への規制強化や情報共有体制の整備を進めてきた。だが、それが国民のプライバシーを脅かす内容であってはならない。
サイバーセキュリティと個人の権利保護のバランスをどう取るか。今回の法案は、まさにそのギリギリの線を突いてきた。井上氏の追及は、私たち自身の“通信の自由”が、いま試されていることを物語っている。