2025-04-07 コメント投稿する ▼
石破首相「現場を見たい」 長生炭鉱遺骨問題、市民団体の努力に国が動くか
石破首相、長生炭鉱現場視察に前向き 市民の遺骨収容活動に理解示す
1942年に発生した長生炭鉱水没事故で、海底に眠る犠牲者の遺骨収容をめぐり、政府の姿勢に変化が見え始めている。4月7日に開かれた参院決算委員会で、社民党副党首の大椿ゆうこ議員が政府の対応を問いただしたところ、石破首相は現地視察に前向きな姿勢を示し、「政府として何ができるかをさらに検討したい」と答弁した。
事故の背景と未解決の遺骨問題
長生炭鉱の水没事故は、山口県宇部市の海底炭鉱で1942年に発生し、183人が命を落とした。うち136人が朝鮮半島から動員された労働者であり、その遺骨の多くは今なお収容されず、海底に残されたままだ。
事故から80年以上が経つ中で、国による本格的な遺骨収容は実現していない。厚生労働省には「人道調査室」という担当部署があり、予算も毎年1000万円以上ついているが、執行実績はほとんどないのが実情だ。
政府は寺院以外での調査に慎重姿勢
大椿議員はこの日、厚労省の対応を「予算があるのに使わず、現地調査を避けている」と批判。さらに2005年に日韓両政府が交わした「遺骨が確認された寺院での調査」という合意が、炭鉱のような場所での調査を妨げているのではないかと追及した。しかし岩屋毅外相は、合意違反にあたるかどうかについて明言を避けた。
市民の力頼みの現場、資金は不足
現在、遺骨収容に向けて最前線で動いているのは、地元の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」だ。彼らはクラウドファンディングなどで2249万円を集め、ダイバーによる調査や坑口補強などに取り組んでいるが、必要な予算にはまだ1500万円ほど足りないという。
こうした市民の努力に頼りきっている現状について問われた石破首相は、「市民団体の活動は非常に尊い。政府が危険を承知して自己責任で済ますべきではない。遺骨が安全に発見され、遺族のもとに返ることの大切さはよく認識している」と語り、国の支援のあり方を再検討する意向を示した。
現地視察へ踏み出すか 首相が前向き答弁
厚労省の福岡資麿大臣は従来通り「実地調査は実務の範囲を超えている」と答弁したが、石破首相は「現場を見た方がより正確に状況を把握できる。関係者の理解を得られるのであれば、ためらう必要はない」と述べ、視察に前向きな姿勢を明らかにした。
大椿議員は、「本来これは国が責任を持って取り組むべき事業だ。戦後80年の節目の年に、過去の清算を進めるべきだ」と強調。政府に対し、遺骨収容への支援を本格化させるよう重ねて求めた。
- 1942年の長生炭鉱水没事故で183人死亡、うち136人が朝鮮半島出身労働者
- 多くの遺骨が海底に放置されたまま、政府の回収活動は進まず
- 市民団体がクラウドファンディングで独自に調査を進行、資金はまだ不足
- 石破首相は市民の努力を「尊い」とし、国の支援を検討すると答弁
- 現地視察についても「ためらう必要はない」と発言し、今後の政府対応に期待
長生炭鉱の遺骨収容は、戦争の爪痕をどう記憶し、どう向き合うかという日本社会の姿勢が問われる象徴的な問題だ。市民と政府の歩み寄りが、今こそ求められている。