2025-05-20 コメント投稿する ▼
個人情報保護法改正案、今国会提出見送り 課徴金制度巡り経済界と調整難航
個人情報保護法改正案、今国会提出見送り 経済界との調整難航
平将明デジタル相は20日の閣議後の記者会見で、個人情報保護法の改正案について「今国会に提出は難しい」と明言した。個人情報保護委員会は当初、6月22日が会期末の通常国会での提出を目指していたが、企業への課徴金制度の導入をめぐり、経済界との意見調整が難航したため、断念を余儀なくされた。
改正案は秋に予定されている臨時国会での提出を目指す見通し。個人情報保護法は3年ごとに見直すことが義務付けられており、今回は特に個人情報を不正に販売したり、管理が不十分で情報漏えいを引き起こした企業への罰則強化が議論の中心となっている。
課徴金制度をめぐる経済界の反発
課徴金制度は、企業が個人情報を適切に保護しなかった場合に罰金を科す仕組み。しかし、経済界はこの制度に対し強い懸念を示している。「過剰な規制により、企業活動が萎縮する」「正当なデータ利用が阻害される」といった声が上がり、調整が難航した。特に企業側は、故意でないミスや軽微な違反にも課徴金が課される可能性に警戒感を強めている。
一方、個人情報保護委員会は「消費者の権利保護を強化するための必要な措置」と強調し、悪質な違反を抑止するための具体的な制度設計を進めている。たとえば、課徴金の対象は重大な違反行為に限定し、企業側が適切な措置を取っていた場合は減額や免除の可能性も検討されている。
国際基準と日本の対応
日本が課徴金制度の導入を検討している背景には、国際的な動向がある。欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)や米国の連邦取引委員会(FTC)法など、主要国ではすでに罰則付きの規制が導入されている。日本もこれに対応することで、国際的な信頼性を確保し、企業間のデータ取引において不利にならないようにする狙いがある。
しかし、国内では企業の負担が増えるとの懸念も根強い。特に中小企業にとっては、課徴金に備えるための体制構築が大きな負担となる可能性が指摘されている。政府は、経済界との対話を通じて、企業活動を支えながらも消費者保護を実現するバランスを模索している。
今後の見通し
平デジタル相は「引き続き経済界と対話を続け、合意形成を目指す」と述べ、秋の臨時国会での改正案提出に向けた準備を続ける方針を示した。個人情報保護委員会も、企業側の意見を取り入れながら、制度設計をさらに精査していく見通し。
この改正案が実現すれば、日本の個人情報保護が国際水準に近づくことが期待されるが、経済界との調整は引き続き難航が予想される。