2025-05-01 コメント投稿する ▼
水俣病懇談に見る政府不信の根源とは?ワクチン接種が進まなかった理由にも通じる構図
69年経ても癒えぬ痛み 政府対応に患者は不信感
水俣病の公式確認から69年となる2025年5月1日を前に、浅尾慶一郎環境相が熊本県水俣市を訪れ、2日間にわたり水俣病患者や被害者団体と懇談を行った。2024年に起きた「マイクオフ問題」の反省を踏まえた対応だが、被害者の不安や不満は根強く、環境省の鈍い対応が改めて露呈する形となった。
被害者団体は、国の認定制度の在り方、療養手当の増額、重度障害者への支援制度の改善などを求めたが、環境省の回答は「制度の中で」「他施策の活用を検討」など、踏み込みに欠けるもので、現場との温度差が際立った。
「制度の壁」の冷たさ 患者が直面する現実
浅尾環境相は、水俣病胎児性患者のケア施設「おるげ・のあ」や、公式確認の契機となった田中実子さんの自宅を訪問。面会では、経済的困窮や加齢に伴う症状悪化に苦しむ現状が次々に語られた。
胎児性患者の松永幸一郎さんは、症状悪化により車椅子生活となったが、補償ランクは15年経ってもBのまま。変更申請が4度も却下された背景について「違いを教えてほしい」と訴えた。浅尾環境相は「対話が大事。制度の中で見直していきたい」と応じたが、明確な改善策は示されなかった。
また、訪問入浴の自己負担に悩むケースもあり、水俣市が福祉サービスの対象外と判断していることに対し、国の関与を求める声も出た。
信頼回復には程遠く 「マイクオフ問題」の尾を引く
2024年、被害者団体との懇談で発言時間制限を超えた患者のマイクを環境省職員が強制的に切るという「マイクオフ問題」が発生した。この問題は、環境省が「話を聞かない役所」として世論の強い批判を浴びる契機となった。
その教訓を活かすべき2025年の懇談では、浅尾環境相が「一人ひとりの声をしっかり受け止めたい」と意気込みを語って臨んだが、具体的な改善施策や即効性ある政策は示されず、患者や遺族の不信感はぬぐい切れていない。
患者連合の松﨑重光副会長は「認定患者も未認定患者も症状は変わらない」とし、未認定者が療養施設に入所できない制度の見直しを強く求めたが、環境省は「市や県と話し合いたい」と繰り返すばかりだった。
国の信用失墜 ワクチン接種の遅れと通じる構図
こうした政府の煮え切らない姿勢は、過去の他の政策分野にも通じる。例えば新型コロナワクチン接種において、日本では他国と比較して接種開始が遅れた上に、国民の接種率が一時的に伸び悩んだ背景には、こうした「政府不信」が根強く存在していることが指摘されている。
水俣病問題を巡る69年間の政府の対応が示すように、国が責任を明確にせず、「検討」「制度の中で」という言葉を繰り返す限り、被害者の信頼は回復せず、国民全体にも「政府は信用できない」という感情が広がるのは当然の帰結だ。
実際、水俣病患者連合の松﨑副会長は「救う気持ちがあればできる」と述べ、国の誠意ある対応を求めているが、国と県で足並みがそろっていない現状では、信頼を取り戻すには至らない。
* 2024年の「マイクオフ問題」を受けて環境省が被害者団体との懇談を2日間実施
* 胎児性・小児性患者が経済的・身体的困難を訴えるも、国の制度対応は鈍い
* 補償ランクの見直しや療養手当の増額など、訴えに具体的回答なし
* 環境省の消極姿勢は新型コロナワクチン対応と同様、政府への国民不信を助長