2025-07-24 コメント投稿する ▼
障害者グループホームに総量規制の是非 厚労省が制度改正へ論点提示
障害者グループホームに総量規制の是非 厚労省が制度改正に向け論点提示
障害者の暮らしを支えるグループホーム(共同生活援助)に対し、厚生労働省が新たに「総量規制」の導入を検討している。24日に開かれた社会保障審議会・障害者部会では、制度改正に向けた論点の一つとして、グループホームを自治体による事業所の供給量調整対象に加えるべきかが議題となった。
厚労省は、グループホームの供給量が各地で想定を超えて増加している現状に対し、「需給バランスが悪い」「サービスの質が保てない」といった地方自治体からの声を紹介。総量規制の対象にすることで適正な供給を促し、過剰な設置や低質な運営のリスクを抑える狙いがあると説明した。
「質の確保」をめぐる課題と懸念
今回の部会では、グループホームの総量規制導入に対して明確に反対する委員は少なかったものの、制度導入の前提として「本当に必要なサービスが必要な人に届く体制」が構築されているかが問われた。
委員からは、「重度障害者が安心して暮らせるグループホームの供給はむしろ不足している」との指摘が相次いだ。つまり、現状の「数が多すぎる」という問題は、量そのものではなく、質と対象のミスマッチに起因している可能性が高いというわけだ。
また、見込み量の算出方法そのものに疑問の声も上がった。「推計が現実に即していなければ、規制の前提が揺らぐ」との指摘が出されたほか、「重度の障害者や医療的ケアが必要な方を受け入れているホームは、規制対象から外すべき」といった柔軟な設計を求める意見も寄せられた。
「数が多いって言うけど、質の話が抜けてないか?」
「規制より、支援の中身と現場の労働環境を見直して」
「重度障害者の入れる場所が少ないのに規制って逆行では」
「営利目的で粗雑な施設が増えてるのは事実。質に軸を置いた規制を」
「本当に必要な人のために、量も質もバランスよく考えてほしい」
こうした有権者・市民の声からも、グループホームを単なる「数」の問題として捉えるのではなく、誰がどんな支援をどこで受けられるかという、生活実感に即した制度設計が求められていることがうかがえる。
営利法人の参入拡大と“質の確保”の両立
背景には、グループホーム運営への営利法人の参入が急増していることがある。近年、自治体の指定や補助金を受けながらも、実態としては十分な支援体制を整えていない事業者の存在が問題視されてきた。
一方で、こうした民間参入が障害福祉サービスの供給量を下支えしている現実もある。制度としての「量の適正化」と、「質の維持・向上」をどう両立させるかが、今後の検討の焦点となる。
厚労省は、総量規制導入の是非だけでなく、指定基準や指導監督体制の見直し、質に関する評価制度の導入なども含め、包括的な制度改革を検討する意向を示している。
本当に必要な人に、必要なサービスを
障害者支援は、本来「その人が地域でどう暮らすか」に向き合うものである。グループホームが量的に増えていても、重度障害者や医療的ケア児者、高齢障害者などが利用できないのでは、福祉制度としての意義が問われる。
単純な供給制限ではなく、「何のための規制か」という理念を明確にし、支援の多様性を確保しつつ地域の実情に応じた柔軟な対応を可能にする制度改正が求められている。
制度改革に際しては、全国一律の規制ではなく、地域性や障害特性に配慮した精密な設計と、運営実態の継続的な検証が不可欠である。
厚労省は今後も議論を深めるとしており、障害当事者、支援者、自治体が実感を持てる制度改正が実現するか、注目が集まる。