2025-06-11 コメント投稿する ▼
福祉用具にスマート車いす・歩行器が追加へ 厚労省が通信機能の貸与規制を緩和
福祉用具貸与に“スマート機器”も追加へ 厚労省が規制緩和を方針化
厚生労働省は11日、介護保険による福祉用具貸与の対象機器に、GPSや通信機能を備えたスマート型の車いす・歩行器などを新たに加える方針を明らかにした。これまでの厳格な規定を見直し、テクノロジーの進展に対応した形でルールを柔軟に再構築する。今後は審議会を経て正式決定の後、通知やガイドラインを改正する見通しだ。
制度開始以来初めて、通信機能を持つ用具の範囲が大幅に拡張される方向に舵を切った今回の見直しは、介護現場が抱える課題に対して“デジタルの力”で応える姿勢の表れでもある。
時代遅れだった旧ルール 「分離可能」から「実用重視」へ
現行制度では、通信機能を備えた機器について「通信モジュールが物理的に分離できること」が事実上の条件となっていた。そのため、車いすや歩行器に位置情報通知などの高度な機能を搭載しても、通信部が一体型であれば保険給付の対象外となっていた。こうした規定は、もはや現場の実情やテクノロジーの進化にそぐわないと長らく指摘されていた。
今回の見直しでは、GPSで居場所を家族に通知できる車いすや、使用状況や故障を知らせるスマート歩行器などが貸与対象となる。認知症高齢者の徘徊を感知するシステムについても、これまで自宅に設置された端末との通信に限っていた制限を緩和し、外部のサーバーやスマホとの通信を許可する方向で見直す。
「ようやく時代に追いついた。現場の声が届いた証拠」
「家族にとっては本当にありがたい。位置情報は命綱になる」
「高齢者の見守りと自立の両立にはスマート化が不可欠」
「これまで“一体型はNG”だったのが不思議なくらい」
「もっと早く実現すべきだったが、まずは評価したい」
課題は「通信料とサブスク費」 給付対象外は維持
一方で、すべてが保険給付の対象となるわけではない。厚労省は、スマート機器本体の貸与には給付を適用するが、通信料金(月額)、モバイル回線の環境整備(モデム・ルーターなど)、スマホ・タブレットの導入費用、アプリのサブスクリプション費などは引き続き「自己負担」とする方針を維持している。
このため、「機器は借りられても使えない」という“通信貧困”が一部高齢者世帯で発生する可能性も否定できず、自治体や介護事業者による補助制度の併用、または地域支援の仕組みづくりが求められそうだ。
また、スマート機器の導入が現場で混乱を招かないよう、厚労省は今後、通知の改正にあわせてQ&A集や事務連絡を発出し、制度の周知と理解促進を図るとしている。
「福祉×IT」の次なる課題は現場運用と公平性
今回の見直しは「小さな一歩」でありながらも、超高齢社会の日本が直面するケアの質と量の両立に向けた、大きな転換点でもある。厚労省の担当者は会議で「テクノロジーの力で社会課題を解決することが福祉用具の新しい使命」と明言した。
しかし、こうした機器の活用には、現場でのICTリテラシー、障害対応、プライバシー管理、緊急時の運用体制など課題も山積している。導入が都市部中心となり、地方や低所得層との“ケア格差”が広がる恐れもある。機器の提供だけでなく、教育・研修・サポート体制の充実も不可欠だ。
制度が追いついた今、次は現場が追いつけるかが問われている。単なる「貸与対象の拡大」にとどまらず、真の意味で「誰もが使える福祉テクノロジー」となるためには、自治体や事業者の創意工夫と支援がカギを握るだろう。