2025-04-11 コメント投稿する ▼
訪問介護が受けられない町が全国に100以上 国も実態を認める
発表したのは福岡資麿厚生労働大臣。4月11日の記者会見で、国の調査結果として正式に認めた。実はこの問題、今年1月に「しんぶん赤旗」が独自に調査し、すでに107町村で訪問介護事業所が“ゼロ”になっていると報じていた。今回の厚労省の発表は、その報道内容を裏づける形となった。
介護報酬引き下げで加速?
背景にあるのは、2024年4月に実施された介護報酬の見直しだ。厚労省は全体としてプラス改定だと説明しているが、訪問介護については基本報酬が2〜3%引き下げられた。現場の事業所にとっては実質的な減収となり、特に小規模な事業者には大きな打撃となった。
実際、厚労省の調べでは、2024年6月から8月のわずか3か月間で、全国で563カ所もの訪問介護事業所が休止または廃止された。前年の同時期と比べても増加しており、このままでは地域の支援体制が崩れてしまうという声も出ている。
過疎地・離島で深刻な影響
影響が特に大きいのが、過疎地や離島などの小さな自治体だ。人口が少ないうえに介護職員も集まりにくく、1つの事業所を維持するだけでも苦労が絶えない。事業者にとっては赤字覚悟での運営になりがちで、撤退に追い込まれるケースが相次いでいる。
利用者が1人もいない町もあり、訪問介護そのものが提供されていない地域は全国の約3割に及ぶという。医療や福祉の地域間格差が深まる中、国の支援のあり方が問われている。
「支援は強化する」と厚労相 しかし…
福岡厚労相は会見で「小規模事業者への支援を強化し、物価高や賃上げ対応策をしっかり現場に届ける」と述べた。しかし、報酬引き下げそのものに対する反省や見直しの姿勢は示さなかった。
この問題をめぐっては、共産党の国会議員団が予算委員会などで繰り返し追及し、「報酬の引き下げを撤回すべき」と訴えている。また、介護現場を支える民医連なども、国に対して支援強化と報酬補てんを求めている。
- 訪問介護事業所が1つもない自治体は全国で約100町村にのぼる
- この半年で“ゼロ自治体”が10町村増えたことを厚労相が認めた
- 介護報酬の引き下げが事業所閉鎖の一因との指摘も
- 特に過疎地・離島で事業所維持が困難になっている
- 厚労省は支援策の強化を打ち出すも、報酬引き下げへの言及はなし
- 現場や関係団体からは「実効性ある支援を」「報酬見直しを」との声
介護を必要とする高齢者が、住んでいる町に訪問介護を受けられない──。それは“福祉国家”を標榜する日本にとって、あまりに深刻な現実だ。国がようやく実態を認めた今、次に問われるのは「じゃあどうするのか」である。