2025-04-11 コメント投稿する ▼
訪問介護“空白地帯”が全国に拡大 厚労相、小規模事業者支援で対応強化へ
福岡厚生労働大臣は11日の閣議後の記者会見で、こうした“介護空白地帯”が拡大している現状を受け、小規模事業者への支援に本腰を入れる考えを示した。
「介護サービスが届かない」地域が全国に拡大
訪問介護は、自宅で生活を続ける高齢者にとって欠かせないサービスだ。だが、NHKの調査によれば、2023年度の時点で、指定訪問介護事業所がまったく存在しない市町村は全国に109カ所。その数は、この半年間でさらに10カ所増えたという。
また、事業所がたった1軒しかない自治体も268に上り、合わせると全国の5分の1を超える。つまり、地域によっては、サービスが極めて不安定な状態になっているのが実情だ。
福岡大臣は「一部地域では、他の市町村からヘルパーを派遣するなどして対応しているが、今後も丁寧に各地の状況を把握し、必要な支援を講じたい」と述べた。
なぜ事業所が消えていくのか
背景にあるのは、ヘルパーの人手不足と経営の厳しさだ。厚労省のデータでは、訪問介護の人手不足は深刻で、有効求人倍率は14倍を超えている。現場では高齢の職員も多く、「担い手の世代交代が進まない」という悩みが各地から上がっている。
加えて、物価高や人件費の上昇に加え、2024年度から訪問介護の基本報酬が2〜3%引き下げられたことも重なり、「やっていけない」と廃業に踏み切る事業所が後を絶たない。
中山間地域や離島など、移動に時間やコストがかかる地域では、とりわけ厳しい現実が突きつけられている。
小さな事業所をどう支えるか
福岡大臣は、「特に小規模な事業者が生き残れるよう、物価高騰や賃上げへの支援を確実に届ける」と強調。すでに厚労省では、複数の小規模事業者が連携して経営を安定させる取り組みに対し、最大200万円の補助金を出す制度を設けている。
また、広報活動や研修の支援にも補助金を用意し、事業所の存続と人材確保の両面からサポートしていく考えだ。
制度を守るのは“地域の現場力”
制度としての介護保険があっても、実際にサービスが届くかどうかは「地域の現場力」にかかっている。厚労省がどれだけ制度を整えても、現場の担い手がいなければ、介護は成り立たない。
介護が“あるのが当たり前”ではなくなりつつある今、地方の現場をどう守り、支えていくのか。国の対応はまさに正念場を迎えている。