2025-03-31 コメント投稿する ▼
訪問介護事業所の6割が減収 報酬引き下げの影響で経営難
■ 訪問介護事業所の状況
厚生労働省は昨年9月、全国の約3万4,000の訪問介護事業所から3,300を抽出し、調査を行いました。その結果、調査に回答した787事業所のうち、約57%が前年同月と比較して減収していたことが分かりました。また、調査対象となった事業所の約6割で訪問回数が減少しており、介護サービスの提供に支障をきたしている現状が浮き彫りとなっています。
■ 地域ごとの影響
地域別では、どの地域でも5%以上減収した事業所が最も多く、特に中山間地や離島などではその傾向が顕著でした。都市部でも減収が広がっており、地域を問わず多くの事業所が厳しい経営状態にあることがわかります。
■ 報酬引き下げの背景
訪問介護報酬の引き下げは、介護保険制度の財政負担軽減を目的として行われましたが、その結果、既に経営が厳しい事業所にとっては追い打ちをかける形となりました。特に、改定前から4割の事業所が赤字経営だったことを考えると、報酬引き下げが更なる経営難を招いたことは明らかです。
政府は報酬引き下げを「介護職員の処遇改善」を含む加算を行うことで補うと説明しましたが、実際には介護保険収入が減少した事業所の方が多く、結果的に「プラス改定」の効果は限定的だったとされています。
■ サービスの質への影響
この減収は、単に経営面での打撃にとどまらず、サービスの質にも影響を与えています。訪問回数が減少し、介護スタッフの人手不足や高齢化がさらに進行する中で、利用者へのサービス提供が難しくなっている事業所が増加しています。特に、訪問介護は高齢者の生活支援に欠かせない重要なサービスであり、その質の低下は、社会全体にとって大きな問題です。
■ 今後の対応が急務
今回の調査結果から、介護業界の厳しい状況が浮き彫りになった一方で、政府や関係者による迅速な対応が求められています。介護職員の処遇改善や、人材確保のための施策を一層強化することが急務です。また、経営が難しい事業所に対しては、適切な支援を行い、介護サービスが安定して提供されるような仕組み作りが必要です。
介護サービスは高齢化社会においてますます重要になっていく中で、質を保ちながら持続可能な制度を維持するためには、報酬引き下げの影響を見極め、抜本的な改革が求められる時期に来ていると言えるでしょう。