2025-08-26 コメント投稿する ▼
厚労省が5800万円でケアマネ不足対策広報へ 待遇改善と両輪の課題
厚生労働省は、介護支援専門員(ケアマネジャー)の深刻な人材不足に対応するため、来年度予算の概算要求において新たに約5800万円を計上し、広報事業を実施する方針を示した。 ケアマネジャー不足の背景にはいくつかの要因がある。 厚労省の試算によれば、今後10年で必要となるケアマネジャー数は現状から大幅に増える見込みであり、政策的な後押しが急務である。
厚労省、ケアマネジャー不足に危機感
厚生労働省は、介護支援専門員(ケアマネジャー)の深刻な人材不足に対応するため、来年度予算の概算要求において新たに約5800万円を計上し、広報事業を実施する方針を示した。今回の取り組みは、仕事の魅力や意義を若年層や潜在的な有資格者に広く伝え、担い手を確保する狙いがある。
ケアマネジャーは、介護保険制度の要であり、要介護者やその家族にとって最適な介護サービスを調整する存在だ。しかし、2018年度をピークに有資格者数は減少傾向にあり、現職の高齢化も重なって今後10年で急激に担い手が減ると予測されている。介護現場からは「既に人が足りず業務負担が限界に達している」との声も上がっており、厚労省の危機感は強い。
5800万円で展開する広報の中身
厚労省が検討している広報事業は、従来の制度周知を超えて「職業としての魅力」を打ち出す点に特徴がある。具体的には以下のような取り組みが挙げられている。
・啓発用のパンフレットやポスターを全国の介護施設、学校、地域拠点に配布
・学習用の漫画や冊子を作成し、若い世代にも分かりやすく仕事内容を紹介
・現役ケアマネジャーの体験談を盛り込んだPR動画を制作し、YouTubeなどオンラインで配信
・民間団体へ委託し、SNSやイベントを通じた効果的な広報活動を実施
これらの取り組みによって、従来は見えにくかったケアマネのキャリアパスややりがいを広く周知し、就職希望者の裾野を広げることを狙う。
人材不足の背景と課題
ケアマネジャー不足の背景にはいくつかの要因がある。第一に、資格取得の難易度と更新研修の負担だ。介護福祉士や看護師などの経験を持つ人材が受験資格を得られるものの、合格率は決して高くなく、さらに資格維持のための研修も多い。第二に、業務の多忙さと報酬の低さがある。介護サービス計画の作成、事業者との調整、利用者家族への対応など、実務は多岐にわたり責任も重い。
また、人口減少や地域格差も課題である。都市部では需要増に追いつかず、地方では担い手不足がより深刻だ。今後、高齢化の進行とともにケアマネジャーへの依存度がさらに高まることは避けられず、人材確保は喫緊の課題とされる。
ネット上でも、
「ケアマネの仕事が大変なのは知ってるけど待遇改善なしに人は集まらない」
「広報より先に現場の負担軽減をすべきでは」
「若者に伝えるのは大事。ただ現実とのギャップをどう埋めるか」
「パンフや動画で人材不足が解決するとは思えない」
「現職の声をもっと政策に反映してほしい」
といった声が見られ、広報事業だけでは解決にならないとの指摘も目立つ。
広報戦略と現場改善の両輪が不可欠
今回の予算要求はあくまで「魅力を発信する」ことに重点を置いているが、人材不足解消には待遇改善や業務環境の改善が不可欠である。例えば、ケアマネジャーの担当件数の上限緩和が進められた結果、かえって一人あたりの負担が増し、離職につながるケースもある。広報で関心を集めても、現場が過酷なままでは定着は望めない。
厚労省の試算によれば、今後10年で必要となるケアマネジャー数は現状から大幅に増える見込みであり、政策的な後押しが急務である。他国と比較すると、ドイツやスウェーデンなどではケアマネ的な役割を担う専門職が制度的に位置付けられ、十分な処遇改善策も講じられている。日本も同様に、広報と同時並行で環境整備を進めなければ国民の介護需要に応えることは難しい。
最終的に、今回の5800万円の広報予算は「きっかけ作り」に過ぎない。ケアマネジャーの魅力を発信することは重要だが、現場で働く人々の声を反映した政策、待遇改善、研修制度の見直しといった実質的な改革と並行して進める必要がある。
ケアマネジャー人材不足解消へ広報と待遇改善が求められる
厚労省の広報事業は、介護の担い手不足という大問題に光を当てる一歩となる。しかし市民の不安を取り除き、現場を支えるには、報酬や労働環境の改善も不可欠だ。今回の予算要求が単なる広報にとどまらず、政策全体の改善へと発展するかどうかが今後の焦点となる。