2025-06-10 コメント投稿する ▼
岩屋外相、核禁止条約署名を再び否定 NPT体制下で現実的核軍縮を主導
核兵器禁止条約に署名しない理由
日本政府が核兵器禁止条約(TPNW)への署名・批准を引き続き見送る姿勢を明確にした。岩屋毅外相は10日、長崎県の大石賢吾知事と外務省で面会し、同県からの「核兵器禁止条約に署名・批准すべきだ」との要望に対し、「現時点では応じられない」と明確に否定した。
岩屋外相は、現在の国際安全保障環境を踏まえ、核保有国と非保有国の双方が参加している核不拡散条約(NPT)体制の枠組みの中で、「現実的な核軍縮を主導することが最も効果的だ」と説明。感情論ではなく、外交と安全保障のリアリズムに基づいた判断であると強調した。
NPT体制は、核兵器の拡散を防ぐと同時に、保有国による段階的な核軍縮を推進する仕組みである。岩屋氏はこの多国間枠組みの意義を重ねて訴え、「日本は核兵器廃絶という理想に向け、現実的な道を選び、実効性のある取り組みを積み重ねていく」と語った。
NPT再検討会議に向けた外交的取り組み
岩屋外相は、来年予定されているNPT再検討会議に向けた日本政府の方針にも言及した。すでに4月、ニューヨークの国連本部で開催された準備委員会で外相自ら演説を行い、核軍縮における日本のリーダーシップを国際社会に訴えたという。
「被爆国として、核兵器の非人道性を訴える使命を果たす一方で、安全保障の現実とも向き合わなければならない」と岩屋氏は述べた。この発言からも、理想と現実を両立させる難しさの中で、日本が歩もうとしている「現実的平和外交」の方針が読み取れる。
核兵器禁止条約の限界と日本の立場
核兵器禁止条約は、核兵器を非人道的兵器として全面的に違法と位置付けるものであり、道義的な意義は大きい。しかし、その実効性には限界がある。そもそも核兵器を保有している主要国(米、露、中、英、仏など)が一国も参加しておらず、国際安全保障における力の均衡とは乖離した「理想主義的条約」との批判も根強い。
日本は米国の「核の傘」に安全保障を依存しており、条約に参加すればこの抑止の枠組みに影響を及ぼす可能性がある。岩屋氏の姿勢は、こうした現実的な国益と安全保障の要請を無視せず、責任ある外交を追求していると評価できる。
被爆地からの署名要請には理解を示しつつも、安易な賛同ではなく「結果に結びつく枠組みの中でこそ、日本が真の役割を果たせる」との信念を示した格好だ。
ネットの反応:現実的判断に理解も
SNS上では、岩屋外相の姿勢に対して賛否が交錯しているが、国際現実を見据えた判断に一定の理解を示す声も多い。
「理想論だけじゃ世界は変わらない。岩屋さんの説明は納得できる」
「核兵器禁止条約に署名しても、肝心の保有国が無視してるなら意味ない」
「日本は被爆国だからこそ、現実的な道で結果を出すべき」
「情緒に流されず、安全保障と外交のバランスを考えてるのは評価できる」
「反対派は感情論が強すぎる。国民の安全保障をどう守るかを第一に考えるべき」
一方で、条約に加わるべきとの声も根強く存在し、今後も国民的議論は続きそうだ。
理念と現実の間での模索
日本政府は、核兵器の非人道性に対する強い懸念と、現実の安全保障を両立させるという、難しい外交課題に直面している。岩屋外相の今回の発言は、「ただ理想を叫ぶのではなく、現実の力学を理解したうえで、核なき世界に近づく道を模索する」という日本の姿勢を改めて示すものであった。
被爆地・長崎の思いに応える形で、核軍縮への道を一歩一歩踏みしめる。その道は平坦ではないが、日本が担う「橋渡し」の役割は、国際社会において一層重みを増していくだろう。