2025-07-31 コメント投稿する ▼
ふるさと納税、過去最高の1.2兆円でも問われる制度の歪み 「富裕層減税」「官製通販」化に懸念
寄付総額は1.2兆円で過去最高 富裕層ほど“得”する仕組みに
ふるさと納税の2024年度(令和6年度)寄付総額が1兆2728億円に達し、制度開始以来の過去最高を記録した。物価上昇により返礼品の単価が上がっているほか、定期便など高額寄付につながる仕組みが拡大し、制度が「富裕層優遇」の側面を強めていることが浮き彫りになった。
寄付件数自体は5879万件と前年より0.3%減少したが、1件あたりの平均寄付額が上昇しており、制度をフル活用する層に偏りが出ていることが伺える。
本来、地方と都市部の税収格差を是正する目的で始まった制度が、結果として高所得者層による“お得な節税策”に化しているとの批判も根強い。
寄付総額上位に「例外的寄付」も 競争激化で返礼品も過熱
寄付総額1位となったのは兵庫県宝塚市(257億円)だが、そのうち254億円は市立病院への個人寄付2件によるもの。実態としては極めて例外的であり、制度の集計基準のあり方も問われている。
2位以下には北海道白糠町(212億円)、大阪府泉佐野市(182億円)、宮崎県都城市(177億円)と、返礼品の魅力やコスト競争力で名を馳せた常連自治体が並ぶ。特に泉佐野市は過去に通販サイト型返礼品で総務省との対立を繰り返し、今回も長野県産クラフトビールの“他地域産品”提供で制度の限界を露呈させた。
地方自治体同士の「寄付金争奪戦」は激化の一途をたどっており、返礼品の豪華化や競争の過熱が制度の本来趣旨を損ねているとの指摘は強い。
仲介業者に1656億円 「官製通販」化が進行
ふるさと納税制度の運営には巨額の経費がかかっており、返礼品の調達費用だけで約3208億円、さらに事務費や送付・広報・決済費用として約2693億円が投入された。中でも注目されるのは、楽天などの仲介サイト運営事業者に支払われた費用が1656億円に上る点だ。
本来「寄付」として自治体支援を目的とした制度が、大手通販サイトを経由することで「官製通販」の様相を呈しているとの懸念が広がっている。各サイト間ではポイント付与などの顧客囲い込みが横行し、制度の趣旨が希薄化している。
総務省はこうした過熱競争を抑制するため、2024年10月からポイント付与の禁止に踏み切る方針だが、楽天グループはこれに猛反発し、措置の無効を求め行政訴訟に発展している。
大都市からの税流出は深刻 補填格差にも問題
ふるさと納税により本来の納税先から税が“流出”する現象は都市部で深刻化している。2024年度の住民税流出額は、横浜市が343億円と最多。名古屋市(198億円)、大阪市(192億円)、川崎市(154億円)、世田谷区(123億円)と続く。
これらの自治体のうち、地方交付税の交付団体である横浜市や大阪市は流出分の75%が補填されるが、東京の特別区など不交付団体では全額が税収減に直結する。制度設計の補填格差にも見直しを求める声が高まっている。
市民からは「制度が歪んでる」「本当に困ってる地域に届いてるのか」
ふるさと納税の拡大と同時に、市民からは制度の趣旨と現実の乖離に対する疑問も強まっている。
「お得なのは分かるけど、正直“ふるさと”って感じが全くしない」
「高額納税者が得をして、都市部のサービスが削られてるって本末転倒」
「返礼品の競争じゃなく、本当に困ってる自治体の課題解決に使ってほしい」
「仲介業者が潤ってるだけの制度に見える」
「税金がポイントで釣られる時代は終わらせていい」
市民が制度に期待するのは、「納税者としての選択肢」ではなく、「地域への支援としての信頼性」であるべきだ。
本来の目的はどこへ 公平性と制度設計の再構築を
ふるさと納税は、本来「都市に集中する税収を地方へ流す仕組み」として始まった制度だ。しかし実態としては、富裕層による節税手段、大手EC業者の収益源、高額返礼品競争の場へと変質しつつある。
公平性の観点からも、住民税の補填格差や高所得者優遇が制度の根幹に影を落としており、もはや単なる「人気制度」として見過ごせる段階ではない。
政府や自治体は、制度の透明性を高め、趣旨に立ち返る仕組みづくりを早急に進める必要がある。真に困窮する地域への資源配分を実現できなければ、「ふるさと」を名乗る意義すら失われかねない。