2025-09-08 コメント投稿する ▼
ふるさと納税「100%還元」広告が横行 制度趣旨との乖離と改革の行方
10月から仲介サイト事業者によるポイント付与が禁止されるのを前に、ふるさと納税を巡って過激な広告が相次いでいる。 「100%還元」といった表示で駆け込み需要を狙う手法は、制度趣旨に反するとして強い批判を呼んでいる。 実際に「ヤフーふるさと納税」でも同様のキャンペーンが行われているとされ、業界関係者は「9月の駆け込み需要に合わせ、事業者やコンサルが猛烈に営業していた」と証言する。
ふるさと納税「100%還元」広告に批判高まる
10月から仲介サイト事業者によるポイント付与が禁止されるのを前に、ふるさと納税を巡って過激な広告が相次いでいる。「100%還元」といった表示で駆け込み需要を狙う手法は、制度趣旨に反するとして強い批判を呼んでいる。
例えば「ふるなび」を運営するアイモバイルは、大相撲の元横綱・花田光司氏を起用したテレビCMで「最大全額還元」を打ち出した。規制では返礼品調達費用が寄付額の3割を超えることは禁止されているが、抽選方式を用いれば一部利用者に対して還元率が上限を超えても問題はないとされる。この抜け道を突いた広告戦略だ。
総務省は「還元率の誇張的な表示は禁止」としているものの、広告上で「寄付」という言葉を使わなければ取り締まりは難しい。実際に「ヤフーふるさと納税」でも同様のキャンペーンが行われているとされ、業界関係者は「9月の駆け込み需要に合わせ、事業者やコンサルが猛烈に営業していた」と証言する。
「寄付ではなく投資感覚になってしまっている」
「100%還元なんて制度の趣旨を完全に無視している」
「結局は地方ではなく仲介業者が儲かる仕組みだ」
「消費者も『お得』ばかり追い求めるのは考えものだ」
「制度を見直して減税を優先すべきだ」
返礼品の過激化と制度の矛盾
東京都渋谷区が導入した「ゲーム内通貨」の返礼品はその象徴だ。利用者からは批判が噴出し、シンクタンク代表は「意欲的な取り組みだが制度上の位置付けは不明確」と警告を発した。渋谷区側は「他自治体でも同様の返礼品がある」と説明するが、制度趣旨との整合性が問われる。
神奈川県鎌倉市が横浜市所在の自動車学校のチケットを返礼品にするなど、地域性が希薄な事例も見られる。桃山学院大学の吉弘憲介教授は「場所の履歴がなくなりつつある」と警鐘を鳴らす。人気返礼品は牛肉やウナギといった品目が前面に押し出され、寄付先自治体の存在感が薄れているのが実態だ。
総務省と業界の思惑
制度運営に深く関わる総務省にも波紋が広がっている。仲介サイト最大手「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクは、総務省出身の大井潤氏を社長に迎えた。大井氏はDeNAでCFOを務めるなど民間経験を積んだ人物だが、総務省内では「地方財政に否定的だった官僚が業界のトップに」と驚きの声が出ている。
ふるさと納税は菅義偉元総理(当時は総務相)の主導で始まった政策だが、今や寄付総額は1兆円を超える。その一方で、多額の経費が仲介事業者に流れ、自治体間の過当競争を助長している現状に、総務官僚の多くは懸念を強めている。
理念との乖離と今後の課題
ふるさと納税の本来の理念は「地方創生」である。だが現在は「お得」を求める消費者と「制度の穴」を探す事業者による攻防が目立ち、理念からの乖離が進んでいる。結果的に自治体同士の税収奪い合いが深刻化し、地方の自立を後押しするどころか歪んだ構造を作り出しているとの指摘もある。
制度改正を控えた今、求められるのは返礼品競争の是正と透明性の確保、そして何より国民に対する説明責任である。単なる「ポイント還元競争」に終始すれば、制度自体への信頼が揺らぎかねない。消費者や自治体がともに納得できる形へと立て直すことが急務となっている。