2025-11-05 コメント投稿する ▼
神奈川県立高校で母語授業検討 外国籍県民会議が提言構想を議論
神奈川県の黒岩祐治知事が設置した外国籍県民かながわ会議において、県立高校での母語授業実施が検討されていることが明らかになりました。 外国人保護者の多忙により家庭内での母語・母文化教育が困難なためという理由から、画期的な取り組みとして注目を集めています。
外国につながる子どもの増加が背景に
神奈川県では外国籍県民の県政参加を推進するため、2000年度から外国籍県民かながわ会議を設置し、定期的に会議を実施しています。2024年8月24日に開催された第13期第4回会議では、「母語(継承語)・母文化教育の機会を保障し、子どもたちのアイデンティティを育成するための仕組み作り」が議題として取り上げられました。
提言構想メモによると、具体的には「幼少期から母語・母文化に触れ、勉強できる場を保障する事業の構築」と「県立高校での母語授業の実施」が目指されています。特に注目すべきは、第2外国語ではなく『母語(継承語)授業』として位置づけ、外国人コミュニティや外国につながりのある人材を講師として活用することが検討されている点です。
神奈川県では外国籍県民数が急増しており、2024年1月1日現在で260,163人となり、前年から20,862人増加しています。県民の約35人に1人が外国籍県民という状況で、外国につながる子どもの数も年々増加している実態があります。
家庭内教育の限界と学校教育への期待
提言が生まれた背景には、外国人保護者の厳しい現実があります。構想メモでは「保護者は毎日の仕事や生活に追われ、家庭内で母語・母文化教育を実施するのはとても難しく、学校教育や地域活動の中で学べる機会を保障することがとても大切だ」と指摘されています。
来日後に生活基盤を築く外国人の多くは、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするケースも少なくありません。子どもたちは日本語環境の中で成長し、日本語が主要言語となる一方で、親の母語や文化的ルーツとの接点が薄れるという課題が深刻化しています。
「子どもが日本語ばかり話すようになって、母国語を忘れてしまった」
「働きながら母語を教えるのは本当に大変」
「学校で母語を学べるなら、とても助かる」
「子どものアイデンティティを大切にしたいけど時間がない」
「祖父母とコミュニケーションが取れなくなるのが心配」
こうした保護者の声は、家庭だけでは解決困難な構造的課題を浮き彫りにしています。
継承語教育の重要性と海外事例
母語(継承語)教育は、子どもたちのアイデンティティ形成や認知能力向上に重要な役割を果たすとされています。継承語とは「親から受け継いだ言語」のことで、移住先の言語環境で育つ子どもたちにとって、ルーツとなる文化や言語を学ぶ機会を提供します。
海外では、米国やカナダ、ヨーロッパ諸国で継承語教育が積極的に取り組まれています。大阪府立高校では中国語やスペイン語、フィリピノ語、タイ語、韓国語の母語授業が単位の得られる正規授業として実施されており、専任教員が担当している先進事例もあります。
研究によると、継承語教育は言語能力の向上だけでなく、学力全体の向上にも効果があるとされ、バイリンガル・マルチリンガルとしての能力開発にも寄与することが報告されています。
神奈川県の多文化共生への取り組み
神奈川県は「ともに生きる社会づくり」を掲げ、多文化共生の推進に積極的に取り組んできました。黒岩祐治知事は就任以来、外国籍県民の県政参加促進や多様性を尊重する施策を展開しており、今回の母語授業検討も、その延長線上にある画期的な取り組みといえます。
県内では既に、NPO法人や市民団体による外国につながる子どもへの学習支援が各地で行われています。横浜市や川崎市では外国につながる子どもの高校進学支援ガイダンスが実施され、多文化教育コーディネーターの派遣事業も展開されています。
しかし、これらの取り組みは主にボランティアベースで運営されており、公的教育機関での母語授業実施は全国的にも稀有な試みとなります。
実現に向けた課題と展望
県立高校での母語授業実施には、講師の確保、カリキュラムの策定、予算措置などの課題が残されています。外国人コミュニティや外国につながる人材の活用が計画されていますが、教育水準の確保や継続的な運営体制の構築が重要な鍵となります。
一方で、神奈川県の取り組みが実現すれば、全国の自治体にとって重要なモデルケースとなる可能性があります。外国人材の受け入れが進む中、多文化共生社会の実現に向けた教育政策として大きな注目を集めることは間違いありません。
外国につながる子どもたちが、日本社会で活躍しながらも自らのルーツを大切にできる環境整備は、多様性を力とする社会の構築において不可欠な要素です。神奈川県の先進的な取り組みが、真の意味での多文化共生教育の実現につながることが期待されています。