2025-06-06 コメント投稿する ▼
京都市議会が北陸新幹線市内ルートに反対決議 地下水・文化財保護を懸念
京都市議会が北陸新幹線ルートに“NO” 地下深くを通るトンネル案に懸念の声
京都市議会は6月6日、北陸新幹線の延伸計画に関し、京都市内を大深度トンネルで通すルート案に「反対」の立場を表明する決議を賛成多数で可決した。敦賀(福井県)から新大阪までの延伸ルートをめぐっては、複数案の検討が進められているが、今回市議会が反対を突きつけたのは、地下40メートル以上の「大深度地下空間」を使って市内を横断するという案だ。
議会が示した懸念の中身
今回の決議の背景には、市民生活や環境、文化財への影響といった様々な懸念がある。議会内では「計画の詳細があまりにも不透明で、住民の理解を得られていない」との意見が多く、反対決議では以下のような懸念が明確に示された。
* 地下水脈への影響
京都市は水の都とも言われるほど地下水が豊富な地域。大深度掘削によってその水脈にダメージを与える可能性が指摘されている。
* 残土の処理問題
トンネル掘削に伴って大量の残土が出る見込みだが、その中に自然由来のヒ素など有害物質が含まれている恐れがある。処分方法や搬出経路も未定である点が問題視されている。
* 市内交通への影響
掘削や残土搬出に伴い工事車両が市内に大量に流入すれば、交通渋滞の悪化や生活道路の安全性低下につながる。
* 文化財の保全
世界的にも知られる神社仏閣が点在する京都市内において、大規模な地下工事が文化財に及ぼすリスクも無視できない。
「丁寧な説明を」松井市長も国に注文
決議を受けて、京都市の松井孝治市長も記者団の取材に応じ、「新幹線の整備そのものには反対していないが、市民が納得できるだけの説明が国からなされていない」とコメント。「この街の未来に直結する問題。計画の全容をオープンにし、市民と議会の声を尊重してほしい」と訴えた。
また、市長は「国策として進める事業ならなおさら、地元の理解と協力が不可欠。トップダウンではなく、地域と一緒に考えて進めるべきだ」と、丁寧な合意形成の必要性を強調した。
JR西日本・国交省は「現段階で詳細は未定」
これに対し、事業主体のJR西日本と、管轄する国土交通省はいずれも「現時点では正式なルート決定は行っていない」と説明。今後も地元との協議を重ねるとしつつも、ルートの絞り込みに向けた環境アセスメントなどが水面下で進んでいると見られている。
市議会決議には法的拘束力はないが、地元自治体の反対は新幹線整備の計画に少なからぬ影響を及ぼす。仮に京都市が強硬に反対姿勢を崩さなければ、工期やルートそのものの再検討を迫られる可能性もある。
ネットでは賛否分かれる声も
今回の決議について、SNS上ではさまざまな意見が飛び交っている。市議会の判断を支持する声がある一方で、新幹線整備を前向きに受け止める声も少なくない。
「トンネルが地下水を壊すなんて怖すぎる。市議会よくやった!」
「文化財の町・京都を壊すような工事は反対。景観も心配」
「利便性を考えたら新幹線の整備は必要。感情的な反対だけじゃ困る」
「京都は古い町だから、何か掘るたびに問題が出る。もっと議論すべき」
「交通渋滞や残土の問題もあるし、軽く見ちゃいけない話だと思う」
北陸新幹線の敦賀~新大阪延伸は、国の広域鉄道ネットワーク政策の一環であり、2020年代末から2030年代の開業を目指して計画が進められている。しかし今回、京都市議会が明確に反対の意思を示したことで、関係機関は方針の見直しや市民への説明責任を一層求められることになる。
地下の「見えない」工事であっても、地域の信頼なくして進むことはできない。新幹線という国家的インフラ整備に対し、京都市がどう向き合っていくのか。今後の動向が注目される。