2026-03-13 コメント投稿する ▼
緊迫の中東情勢「日本は防衛産業の基盤強化を」佐藤正久氏が講演 仙台「正論」懇話会
佐藤氏は、国際情勢の変動が日本の国益に与える影響について、具体的な事例を交えながら解説し、特に防衛産業基盤の強化の必要性を訴えました。 講演では、アメリカの防衛政策の変化が、日本の安全保障に与える影響についても言及されました。 このアメリカの姿勢の変化は、日本にとって、これまで以上に自国の防衛力を強化する必要性に迫られることを意味します。
中東情勢の緊迫と日本のエネルギー安全保障
講演は、現在進行形で緊迫度を増す中東情勢の分析から始まりました。佐藤氏によると、米国とイスラエルによるイランへの攻撃は、地域紛争がさらに拡大するリスクを高めています。この地域は、世界のエネルギー供給、特に日本が大量に輸入する原油の輸送ルートにとって極めて重要な地点です。
具体的には、ペルシャ湾とインド洋を結ぶチョークポイントであるホルムズ海峡の機能が脅かされています。もしこの海峡が封鎖されたり、航行に重大な支障が出たりすれば、日本のエネルギー供給網は深刻な打撃を受けることになります。日本は、エネルギー資源の多くを海外からの輸入に依存しており、その安定確保は国家の存立に関わる最重要課題の一つです。中東情勢の不安定化は、単なる地域紛争の問題ではなく、日本の経済活動や国民生活の基盤をも揺るがしかねない、極めて現実的な脅威であると佐藤氏は指摘しました。
「きょうのホルムズは明日の台湾」
佐藤氏は、中東情勢の緊迫を、日本近海、特に台湾周辺の安全保障環境と結びつけて論じました。「きょうのホルムズは明日の台湾」という言葉は、この講演の核心的なメッセージの一つです。この発言は、一見離れた地域で起きている出来事が、地理的に近い場所で起こりうる事態を予測する上で、重要な教訓となることを示唆しています。
日本が輸入する原油の約9割は、中東からホルムズ海峡を経由し、さらにバシー海峡(台湾の南東に位置する海峡)を通って日本に運ばれています。つまり、バシー海峡もまた、日本のシーレーン(海上交通路)にとって、ホルムズ海峡と同様に「命綱」とも言える重要なルートなのです。もし台湾周辺海域で軍事的な緊張が高まり、このシーレーンが寸断されるような事態が発生すれば、日本経済は壊滅的な影響を受ける可能性があります。島国である日本にとって、安定した海上交通路の確保がいかに重要であるかを、佐藤氏は改めて強調しました。
米国の防衛戦略の変化と日本の課題
講演では、アメリカの防衛政策の変化が、日本の安全保障に与える影響についても言及されました。2026年1月に公表された米国の国家防衛戦略は、「西半球重視」を掲げています。これは、アメリカがこれまで以上に自国の国益、特に地理的に近い北米・南米大陸への関与を優先する方針を示唆するものです。
佐藤氏は、この戦略転換の背景には、トランプ前大統領時代から続く「同盟国は自国の防衛に一層責任を持つべきだ」という考え方があると分析しました。すなわち、「自分の国は自分で守れ」というメッセージが、アメリカの同盟政策の根底にあるという見方です。このアメリカの姿勢の変化は、日本にとって、これまで以上に自国の防衛力を強化する必要性に迫られることを意味します。アメリカの「核の傘」や「日本の防衛」へのコミットメントが変化しないとは限らないという、安全保障上の不確実性が増している状況を指摘しました。
防衛産業基盤強化への提言
こうした国際情勢の変化とアメリカの戦略転換を踏まえ、佐藤氏が最も強く訴えたのが、日本の防衛産業基盤の強化です。「日本の抑止力を考えれば、防衛産業の基盤強化が何よりも重要になる」という言葉には、その危機感が込められています。
国内の防衛産業が衰退すれば、最新鋭の装備品を自前で開発・生産したり、迅速に調達したりすることが困難になります。これは、国民の生命と財産を守るための「抑止力」の低下に直結しかねません。また、技術の維持・継承や、有事の際のサプライチェーンの確保といった観点からも、国内産業の強靭化は不可欠です。佐藤氏は、日本が主体的に安全保障を確保していくためには、経済安全保障の観点も踏まえ、防衛技術の開発や生産能力の維持・向上に積極的に投資していくべきだと提言しました。国際情勢の不確実性が高まる中、自国でしっかりと防衛力を維持・発展させていくための土台作りが、今まさに求められていると講演は締めくくられました。