2025-04-26 コメント: 1件 ▼
「1年限定消費税ゼロ」立民の賭け 経済効果乏しく、生産者圧迫の懸念も
立憲民主党「1年限定消費減税」 苦渋の決断と見えぬ展望
立憲民主党の野田佳彦代表は、2025年夏の参院選公約として「1年間限定で食料品の消費税をゼロにする」案を打ち出した。党勢回復を狙った苦渋の決断だったが、専門家や関係者からは早くも経済効果への疑問と生産現場への深刻な悪影響を指摘する声が上がっている。現実には、この減税策がもたらす副作用を無視できない状況が浮かび上がっている。
そもそも単年の消費減税は、国民の消費行動を大きく刺激する効果には乏しい。日本銀行の家計調査によれば、臨時収入や減税による所得増加があった場合でも、約半数の世帯はそれを消費ではなく貯蓄に回している。とりわけ物価高が続く局面では、将来不安が強まり、家計はよりリスク回避的になる傾向が強まる。そのため、今回の「1年限定消費税ゼロ」も、景気の下支えにはつながらず、期待されたほどの経済効果は見込めないとの見方が広がっている。
さらに、深刻なのは生産現場への影響だ。農業や漁業、食品加工業など、食料品を生産する各段階では、資材購入時などに当然のように消費税を支払っている。本来であればそのコストを販売価格に転嫁すべきだが、特に中小規模の生産者は大手流通業者との力関係が弱く、価格交渉力を持たない。そのため、消費税ゼロという政策が導入されても、販売価格を据え置くことを求められ、自らが背負うコスト負担だけが重くなるという歪みが生まれかねない。結果として、資金繰りに苦しむ生産者が廃業に追い込まれるリスクは現実味を帯びており、食料自給力の低下という、より大きな問題に発展する可能性がある。
今回の「1年限定減税」方針は、立憲民主党内の深刻な対立を回避するための政治的妥協の産物だった。当初、野田代表は「給付付き税額控除」という、所得に応じた支援策を推進していたが、支持率低迷を背景に党内から「もっと分かりやすい政策を」との圧力が強まった。結果、減税推進派に押される形で舵を切らざるを得なくなったのである。「1年限定」という条件も、財政規律派と減税派の間を取り持つ苦肉の策にすぎない。
さらに問題なのは、同様の減税案をすでに維新の会や国民民主党が打ち出しており、立憲民主党としての独自性を確保することが難しい点だ。自民党からも「一時的な減税よりも、より効果的な支援策があるはずだ」との批判が飛び出しており、減税一本で支持拡大を狙う戦略には危うさがつきまとう。
野田代表にとって、今回の決断は確かに党内融和という短期的な効果をもたらした。しかし、「経済政策」としての持続力に乏しく、選挙戦を勝ち抜くための切り札になり得るかどうかは、極めて心もとないと言わざるを得ない。