2025-04-14 コメント投稿する ▼
「職員優先か、患者優先か」──八重山病院跡地めぐり石垣市と沖縄県が対立
県側は、職員の住環境を優先し、日当たりが良く道路にも面した跡地南側に職員宿舎を建てる方針だが、石垣市議会はこれに異議を唱えている。市議6人で構成された議員団は14日、県庁を訪れ、「南側には患者の利便性を考え、かりゆし病院を配置してほしい」と訴えた。
議会が危惧する“逆配置”の弊害
石垣市議会は、すでに3月の定例会で「南側に職員宿舎を建てるべきではない」とする意見書を可決。議員らは、職員宿舎が南側に来ることで、かりゆし病院が北側の自衛隊員宿舎と挟まれる形になり、次のような問題が起きると指摘する。
- 患者が利用しづらくなる(交通の便が悪い、病院が目立たない)
- 南側に設置されるバス停や道路から病院まで距離が生じる
- 混雑による周辺環境への影響
特に足の悪い高齢者や障害のある方にとっては、病院へのアクセスのしやすさが重要だと強調する。
県側「住環境も医療の質の一部」
こうした市側の主張に対し、県病院事業局の宮城和一郎統括監は「職員からは日当たりが良く快適な住まいを望む声が多く寄せられている」と説明。特に沖縄本島から離島への異動が多い県立病院職員にとっては、住環境の質が定着率や人材確保に直結すると訴えた。
「宮古、八重山、北部の勤務は敬遠されがちです。少しでも職員にとって魅力ある職場・住まいにしないと人が集まりません」と語った。
「誰のための病院か」議員団が疑問投げかけ
議員側は「職員のために患者が犠牲になるのは本末転倒だ」と強く反発。友寄永三議員は「県職員としての本分は、患者を第一に考えることではないか」と疑問を呈した。仲間均議員も「足が不自由な方にとって、南側に病院があるかどうかは重要だ」と語気を強めた。
一方で、県側は「かりゆし病院側も北側配置に同意している」と説明。病院事業局の比嘉学経営課長は「八重山全体の医療体制を考えたとき、今の配置が最善だと判断している」と述べた。
解決の糸口は見えず
市議団はなおも反発。「県の説明は机上の理屈に過ぎない。離島を軽視しているのでは」との声も出た。要請後、議員らは県議会にも働きかけ、上原章副議長は「今後、委員会でも取り上げていきたい」と応じた。
なお、県はすでに2022年に職員宿舎建設の基本構想をまとめており、最大4階建ての建物を予定している。高層化を避ける理由としては、エレベーター設置や維持管理のコストが大きくなることを挙げている。だが、職員宿舎が南側に建つと「病院が道路から見えなくなるのでは」との懸念も出ている。
配置計画の最終決定に向け、今後も県と市、関係医療機関との調整が続くことになりそうだ。焦点は、「患者本位の医療」と「職員の働きやすさ」のどちらに軸足を置くのか、という本質的な議論に移りつつある。