2025-04-25 コメント投稿する ▼
インドネシアからマレーバク来園 多摩動物公園で絶滅危惧種の命をつなぐ
絶滅危惧種マレーバクが来日
インドネシアのバトゥ・シークレット・ズーで生まれ育ったマレーバクのメス「シラ(Sila)」が、2025年4月23日に多摩動物公園に到着した。東京都と東京動物園協会が24日に発表した。シラは2018年6月1日生まれの6歳。今後は一定期間、非公開で検疫を受けたのち、体調や環境への順応状況を見ながら園内での公開が検討されるという。
マレーバクは東南アジアに生息する草食性の哺乳類で、森林破壊や密猟などによって個体数が激減。国際自然保護連合(IUCN)が定めるレッドリストでは「絶滅危惧IB類」に指定されており、近い将来に野生での絶滅リスクが高いとされている。
国内でも希少な存在
今回のシラの受け入れで、多摩動物公園にいるマレーバクは計6頭(オス2頭、メス4頭)となった。国内全体でも、2023年末の時点で13の動物園に計32頭(オス17頭、メス15頭)しかおらず、その希少性は言うまでもない。
多摩動物公園では、これまでも他園との協力のもと繁殖に取り組んできたが、海外からの新たな個体導入によって遺伝的多様性の確保と種の保存体制を一層強化していく構えだ。
国境を越えて守る命
シラを送り出したバトゥ・シークレット・ズーとは、かねてより動物の保全に関する国際的なネットワークを通じて交流があり、今回の受け入れはその成果の一つでもある。動物園が単なる展示施設にとどまらず、国際的な「種の保護センター」としての役割を果たす時代に入っていることを象徴する出来事といえる。
動物園の使命は“伝えること”
動物たちの命をつなぐ努力は、来園者へのメッセージにもつながる。多摩動物公園では今後、マレーバクをはじめとする絶滅危惧種の展示やパネル解説を通じて、生物多様性の大切さや環境問題の現状を発信していく予定だ。
来園者がシラの姿を見る日がいつになるかは未定だが、その日を迎えたとき、「遠い国からやってきた命」に思いを馳せる人が一人でも増えることが、保全の第一歩につながるはずだ。
- インドネシアの動物園からマレーバクのメス「シラ」が来園
- シラは2018年生まれの6歳。現在は非公開で検疫中
- 多摩動物公園での飼育数は計6頭、国内では計32頭にとどまる
- 国際協力による種の保存と遺伝的多様性の確保を進める
- 絶滅危惧種への理解を広げる教育的役割にも注力