2025-04-10 コメント投稿する ▼
災害時の「トイレ難民」をなくせ 東京都が“防災トイレ計画”本格始動
東京都は、地震発生直後から避難生活が長期化する過程で、どれだけのトイレが必要になるかを試算。その結果、1週間経過後の時点で、通常のトイレがすべて使えると仮定しても6万7千基、災害用トイレだけに頼った場合は最大14万1千基もの不足が見込まれることがわかった。
能登半島地震で浮き彫りになった「トイレの不便」
内閣府の調査によれば、能登半島地震では和式が多く狭い仮設トイレや、衛生管理が行き届かない状況が課題として浮かび上がった。特に女性や高齢者、妊婦の間では、トイレを避けるために水分を控える人も多く、エコノミークラス症候群など健康リスクを高める要因にもなっていた。
こうした背景を踏まえ、東京都の新たなプランでは、避難所1カ所あたり約20人に1基のトイレを確保するという国際基準をもとに、各地域での不足数や空白エリアの把握を進める。
品川区では最大3200基の不足も
都内の一例として品川区はすでに「災害時トイレ確保・管理計画」を策定。現在の備蓄状況から算出した結果、震災から1週間を過ぎた段階で最大約3200基のトイレが足りなくなるという見通しを示している。地図上で災害トイレの設置状況を可視化したところ、一部地域では徒歩5分圏内にトイレが存在しない“空白地帯”も判明した。
現状、品川区には簡易トイレやマンホールトイレ、トイレトラック、携帯トイレなどを含めて約4800基があるが、想定避難者数20万人に対してはまだ不十分とされている。加えて、耐震化されていないトイレも2000基以上あり、インフラ面での強化も急務だ。
ハードとソフトの両面で対策へ
東京都はこのマスタープランに基づき、トイレの洋式化やマンホールトイレの設置、上下水道の耐震化といった「ハード面」の整備に加えて、使用済み携帯トイレの処理体制の整備、トイレマップの作成・公開といった「ソフト面」の対策も進めていく。災害が起きた直後に、どこで、どのようなトイレが利用可能なのかを迅速に知ることができる仕組みの構築も盛り込まれている。
ロードマップでは、まず令和9年度(2027年度)までに空白エリアの解消を「おおむね達成」、12年度には完全解消を目指す。さらに17年度(2035年度)までには、都内全域でのトイレ充足度の向上と、快適・衛生的な使用環境の確立を目指す。
都の担当者は「トイレの整備は、災害時における『見えにくい負担』を取り除くカギ。都民の安心のために全力で取り組みたい」と話している。