2026-02-25 コメント投稿する ▼
都立高校入試で理科の設問ミス、3万5000人に一律加点の波紋
現場で採点にあたっていた教員が、理科の設問に矛盾があることに気づき、東京都教育庁に報告したことで事態が明るみに出ました。 それは、当該の設問に配点されていた4点を、受験者全員に加点するというものです。 教育庁は「確認が不十分だった」としていますが、具体的にどの段階でチェックが漏れたのか、組織的な課題を洗い出す必要があります。
入試当日の混乱と発覚の経緯
2026年2月21日、東京都内の公立中学校に通う多くの生徒たちが、運命を決める都立高校の一般入試に臨みました。しかし、その試験の裏側で、受験生の努力を揺るがす大きなミスが起きていました。
問題が発覚したのは、試験終了後の採点作業中でした。現場で採点にあたっていた教員が、理科の設問に矛盾があることに気づき、東京都教育庁に報告したことで事態が明るみに出ました。
ミスがあったのは、理科の大問6です。この設問は「物体に働く力」に関する実験をテーマにしたものでした。物理の基礎的な理解を問う内容でしたが、設問の前提となる「おもりの体積」の数値が誤って設定されていました。
本来、理科や数学の試験問題は、複数の点検担当者が数値を計算し直し、矛盾がないか厳重にチェックするはずです。しかし、今回のケースではその網をすり抜けて、誤った問題がそのまま印刷され、受験生の元に届けられてしまいました。
全員正解扱いの異例の措置
東京都教育庁は2月25日の夜、このミスを正式に認め、異例の対応を発表しました。それは、当該の設問に配点されていた4点を、受験者全員に加点するというものです。
対象となる受験者は約3万5000人にのぼります。この設問については、どのような回答を書いていても、あるいは白紙であっても、一律で「正解」として扱われることになりました。
教育庁の担当者は記者会見で、「問題作成の際の確認が不十分だった」と謝罪しました。入試という、人生を左右する重要な場面でのミスに対し、教育行政への信頼が問われる事態となっています。
全員に加点するという措置は、公平性を保つための苦肉の策と言えます。しかし、この「4点」という数字が、合格ラインぎりぎりにいる受験生たちにとって、どのような意味を持つのかを慎重に考える必要があります。
なぜミスは防げなかったのか
今回のミスは、単純な誤字脱字ではなく、実験の前提条件という「理科の根幹」に関わる部分でした。なぜ、多くの専門家が関わっていながら、このようなミスが見逃されてしまったのでしょうか。
背景には、入試問題の作成現場における過酷なプレッシャーと、チェック体制の形骸化があると考えられます。都立高校の入試問題は、毎年新しい傾向を取り入れつつ、難易度を一定に保つことが求められます。
特に理科の実験問題は、図表や数値が複雑に絡み合います。一つの数値を変更すると、他のすべての計算結果に影響が出るため、非常に緻密な作業が要求されます。
教育庁は「確認が不十分だった」としていますが、具体的にどの段階でチェックが漏れたのか、組織的な課題を洗い出す必要があります。一人の担当者のミスに帰結させるのではなく、システムとしての不備を認めるべきでしょう。
合否への影響と受験生の不安
教育庁の担当者は、今回の加点措置について「合否に大きな影響があるとは考えていない」との見解を示しています。しかし、現場の感覚からすれば、この言葉をそのまま受け入れるのは困難です。
高校入試、特に人気のある上位校や中堅校では、わずか1点や2点の差で合否が分かれることが珍しくありません。4点という配点は、合否の判定を大きく左右する可能性がある重い数字です。
また、数値の矛盾に気づいた優秀な受験生ほど、試験時間中に「なぜ計算が合わないのか」と悩み、貴重な時間を浪費してしまった可能性があります。その精神的な動揺は、他の設問のパフォーマンスにも影響したはずです。
「全員加点」は形式的な平等ではありますが、試験中の混乱や焦りまでを補償するものではありません。受験生や保護者からは、納得のいかない声が上がることも予想されます。
今後の再発防止と入試制度の課題
入試における出題ミスは、今回に限ったことではありません。過去にも全国の自治体や大学で繰り返されてきました。そのたびに「再発防止」が叫ばれますが、ミスをゼロにすることは極めて難しいのが現状です。
今後は、AIを活用した数値の整合性チェックや、外部の専門家による多角的な検証など、これまでの慣習にとらわれない新しい点検体制の導入が不可欠です。
また、ミスが発覚した際の公表のタイミングや、受験生へのフォロー体制についても、より透明性の高いルール作りが求められます。今回は試験から4日後の発表となりましたが、受験生の不安を最小限に抑えるスピード感が必要です。
教育の機会均等を守るための入試が、運営側のミスによって不透明なものになってはなりません。東京都には、今回の事案を徹底的に検証し、二度と同じ過ちを繰り返さないための抜本的な改革を期待します。