2025-05-07 コメント投稿する ▼
労働安全衛生法改正案が衆院委で可決、民間移管で安全性に懸念 - 田村議員が指摘
労働安全衛生法改正案、衆院委で可決—現場の安全確保に懸念の声
2025年5月7日、衆議院厚生労働委員会で労働安全衛生法の一部改正案が可決された。与党の自民、公明に加え、立憲民主、維新、国民民主も賛成し、多数決で採択されたが、日本共産党とれいわ新選組は反対の立場を取った。
今回の改正案は、ボイラーやクレーンなどの危険な機器の検査・審査業務を民間機関に移管し、行政コストの削減や効率化を図ることが目的だ。しかし、この変更が本当に現場の安全を守れるのか、疑問の声が上がっている。
「安全は民間任せでいいのか」田村議員が指摘
日本共産党の田村貴昭議員は、民間移管による安全性の低下を強く懸念した。討論で彼はこう述べた。
「ボイラーやクレーンなどの危険な設備は、専門知識と経験を持つ行政職員が安全性を確認してきました。民間に任せたら、事故が起きたときに原因究明すらできなくなるのではないか」
特に問題視されたのは、移動式クレーンやゴンドラだ。これらは落成時の検査が義務化されておらず、自動制御機能や付属品の確認も行われないまま運用されることが多い。田村議員は「行政の目が届かない場所で安全がないがしろにされる」と警鐘を鳴らした。
アスベスト被害の救済策に課題
さらに、田村議員はアスベスト(石綿)被害の救済策についても疑問を投げかけた。厚生労働省は「じん肺診査ハンドブック」の改定案を示し、アスベストによる健康被害の検査方法として「喀痰中好中球エラスターゼ測定」を推奨している。
しかし、田村議員はこれに反論した。「この検査は対応できる施設が少なく、結果にもばらつきがあります。しかも高額な検査費用がかかり、被害を訴えたい人々の負担が増えるだけです」。これに対し福岡資麿厚労相は、「あくまで総合的な医学的判断を行うための参考で、必須ではない」と説明したが、現場での実効性には依然として疑問が残る。
違法なアスベスト工事が常態化
さらに田村議員は、石綿が使用されている建物の改修や解体工事で必要とされるアスベスト事前調査についても問題を指摘した。2022年度には200万件以上の調査が必要とされるとされているが、届け出されているのは60万〜70万件に過ぎない。
「事前調査をしていない違法工事が常態化しています。国がかつて石綿を積極的に使用してきた責任もある以上、もっと厳格に監視し、支援策を講じるべきです」
今後の課題と見通し
今回の労働安全衛生法改正案は、行政の負担軽減と民間活力の活用を目指しているが、その実施によって安全が確保されるかは不透明だ。特に現場の労働者の命を守るためには、行政と民間の連携が欠かせない。
今後、参議院での審議が続く中、現場の安全をどう確保するか、引き続き注視する必要がある。